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気まぐれ短編集
ヤンキーと真面目くん
俺、菊池(きくち)は高校2年生で世間で言うヤンキーだ。
今1人、コンビニの前で煙草を吸っている。

『おい。そんなとこに座ってんじゃねーよ。邪魔。』

もちろん、見た目はヤンキーだからこんなこともしょっちゅうある。
そして俺だって負けてられない。

「あ゛ぁ!?喧嘩売ってんのかおら!買ってやるよ!」

ドカッバキッ

『はっ。口だけかよ。』

しかし、とても弱い。
(あぁ…また駄目か…。)
そうしてコンビニ前で意識を失った。





―――――シュンシュン…
(なんの音だ…。なんか…。あったかい…。)
目を開けた先は知らない天井。
「ここは……どこ…だ…?」
辺りを見回そうとすると胸にズキッと痛みが走る。
どうやらいつもより傷は酷いようだ。
しかし、自分の胸には包帯が巻かれている。
「なんで…?」

独り言を呟いていると急に上から覗き込まれた。
黒い髪でめがね。年は俺と変わらないか…?
しかし、奴は何も言わずそのまま俺から離れた。

「お前…誰だ。これ…お前がやったのか?ここはどこだ?」

状況は把握出来てない上にこの怪我では明らかに自分が不利であるため少しでも情報を得ようと質問する。
しかし、相手は何も答えず食器棚からマグカップを取り出していた。
その状況に苛立つが、身体中が痛くて殴りに行く事も出来ない。
痛みをこらえベッドから起き上がって周り見回すと、近くに先ほどまで自分が身につけていたの制服があり、そのポケットには煙草が入っていた。
この苛立ちを紛らわせるには煙草を吸うしかない!と考えた菊池はそれを取り出し、火をつけようとした次の瞬間。

ドサッ

「…………えっ?」

ベッドに逆戻り。
しかし、先ほどとはかなり違う。
なぜかって?
そりゃお前…俺が……く…組み敷かれてる!?

「ちょっ!?なっ!?」

何が何だかわからない俺は取りあえずバタバタ暴れる。
すると、目の前の男が

「未成年…でしょ。」

と煙草を取り上げた。
そして、俺の上から退いた。
(なに?なんなんだ?なにが起こった?)
そんなことを考えていたがはっと我にかえって煙草を取られたことに気付き、そいつに飛びかかる。

「てめっ!返せっ!」

しかし、男は持っていた煙草の手をヒョイと頭の上に持ち上げてしまう。
俺はどうにか取り返そうと手を伸ばすー……が全く手が届かない。
(こいつ…デカいっ!!)

「お…お前!卑怯だぞ!俺の煙草返せー!」

男はフルフルと首を左右にふる。
なんとか煙草取り返そうとジャンプして手を伸ばす俺。
しかし、ジャンプした時に滑って男の唇にダイブ。
チュッというかゴチっと言うか…とにかく唇にキスをしてしまったのだ。

「ーー…っ!?」

その男から赤い顔を隠しながらバッと離れる。
しかし、先ほどの喧嘩の怪我で無理に動いたせいか、急に身体中が痛みだしたのだ。
(タイミング悪すぎ…)と思いながらも、その痛みに耐えきれずその場にうずくまった。

すると男は俺をお姫様抱っこしてベッドに運んだ。
(もう…どうにでもなれ…)
と思い目を瞑った時。

「悪…かった…。」

俺が目を開けてみると、目の前には心配そうな男の顔があった。
何か仕返しをして来そうな雰囲気でもない。
(なんだよ…俺が悪いのに…)
とそこで冷静になって気付く。
「で…誰だ?」

思っていたことをつい口に出してしまった…。
(やっちまったー…。これでもしストーカーとかだったら俺どうすればー…。)

「相川…。君コンビニで倒れてたから…。俺の家に連れてきた…。」

そして相川と言う男は顔を赤くする。なぜそんな小さい声なんだ?そしてなぜ顔を赤くする?など疑問に思うことは多いが取りあえず助けてくれたのだとわかった。
そして相川は続ける。

「動けるようになるまでなら…。居てもいい…。」

そう言ってマグカップを取りに行き暖かいコーヒーをベッドまで運んで来てくれた。

(なんて良い奴なんだ…!)
俺は相川は良い奴だと認識し、その言葉に甘えることにした。


――数日後……

ピーンポーン…

バタバター…ガチャ

「相川♪美味しいケーキ買って来たから食後に食べようぜ♪」

「でも…家帰らないとダメ…。」

「わーってるよ!ちゃんと夕飯食ってケーキ食べたから帰るから!なっ?」

相川は渋々頷き家に入れた。

あの後俺は相川の家に入り浸るようになった。
傷の消毒だけでなくご飯までも作ってくれ、俺の世話をしてくれた。
相川は俺より頭の良い学校に通う同い年だった。
高校に入る時に1人暮らしを始めて、あの日はたまたま学校帰りにあのコンビニに寄ろうとして、俺を見つけたのだと言う。

そして、ここ数日一緒にいて気付いた。

こいつはすっげー無口で、真面目で、照れ屋で、人付き合いが苦手だけど…すっげー良い奴だと。
だから俺はあの時のキスをただの間違いじゃなくしたい。
だから今、俺はこいつを落とす為の罠を張ってる最中だ。
いつかこいつを惚れさせてやる!

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あきゅろす。
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