トラウマだって乗り越えて... 2 「俺のステーキ…」 「荊がぼーっとしてるのが悪いんだ」 荊は焔をじとーっと見つめ、焔は知らん顔で食べ続ける。 煌夜はもう一度溜め息をつくと、スッと息を吸い説教モードに入った。 「お前らたった肉のひと切れでギャーギャー騒ぐんじゃない!だいたい肉なら他にもあるだろう!特に焔!お前は、さっき唐揚げを大量に取っていただろう!なぜわざわざ荊の肉を奪う必要がある!?」 「ステーキと唐揚げじゃ全然ちげーもん」 「種類は違うとも、同じ肉だろう!まったくお前と言うやつは…」 「まぁまぁ…。そんなに怒らないであげて下さいよ。煌夜坊ちゃん」 また説教を続けようとする煌夜の隣に立ち、クスクス笑いながら鷹野がスッと手を出し、焔の方を向いた。 「そんなにステーキが食べたいのなら、言ってくださればいいのに。まだ焼けばありますよ。少し待っていて下さいね」 そう言ってキッチンへ向かおうとした鷹野を、焔は慌てて止めた。 「あっ、い、いえ!大丈夫です!」 「……?でも…足りなそうですけど…」 「そんな!まだこんなにあるんですから大丈夫です!さっきのはふざけただけなんで…」 「ふざけて俺のステーキ食べたの!?」 「お前は黙ってろ」 焔が一喝すると、ガーンと固まった荊。 そのやりとりに、またクスクスと笑う鷹野。 「そんな遠慮なさらなくても宜しいのに…」 そんな中、1人つまらなそうにしていた凜が口をはさむ。 「そいつがいいって言ってるんだからやらなくていいよ、鷹野。それより僕、お風呂入りたいんだけど」 「それは気が利かず、すみません」 「早くしてくれないかな」 「はい。只今準備致しますので、しばしお待ち下さい」 鷹野はにこりと笑ってから一礼すると、すぐにその場を立った。 それを、凜は横目で睨みつける。 「…おい、お前。いくら鷹野さんが使用人だからって、そういう態度はねーんじゃねぇの?」 鷹野がドアの外へ消えると、焔は凜を睨みつけた。 ドアが閉じるまで鷹野を睨んでいた凜は、そのままの目つきで焔を睨み返す。 「君にうちの事に口出しされる権利はないよ。黙って」 [*前へ][次へ#] [戻る] |