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トラウマだって乗り越えて...

「俺のステーキ…」

「荊がぼーっとしてるのが悪いんだ」

荊は焔をじとーっと見つめ、焔は知らん顔で食べ続ける。
煌夜はもう一度溜め息をつくと、スッと息を吸い説教モードに入った。

「お前らたった肉のひと切れでギャーギャー騒ぐんじゃない!だいたい肉なら他にもあるだろう!特に焔!お前は、さっき唐揚げを大量に取っていただろう!なぜわざわざ荊の肉を奪う必要がある!?」

「ステーキと唐揚げじゃ全然ちげーもん」

「種類は違うとも、同じ肉だろう!まったくお前と言うやつは…」

「まぁまぁ…。そんなに怒らないであげて下さいよ。煌夜坊ちゃん」

また説教を続けようとする煌夜の隣に立ち、クスクス笑いながら鷹野がスッと手を出し、焔の方を向いた。

「そんなにステーキが食べたいのなら、言ってくださればいいのに。まだ焼けばありますよ。少し待っていて下さいね」

そう言ってキッチンへ向かおうとした鷹野を、焔は慌てて止めた。

「あっ、い、いえ!大丈夫です!」

「……?でも…足りなそうですけど…」

「そんな!まだこんなにあるんですから大丈夫です!さっきのはふざけただけなんで…」

「ふざけて俺のステーキ食べたの!?」

「お前は黙ってろ」

焔が一喝すると、ガーンと固まった荊。
そのやりとりに、またクスクスと笑う鷹野。

「そんな遠慮なさらなくても宜しいのに…」

そんな中、1人つまらなそうにしていた凜が口をはさむ。

「そいつがいいって言ってるんだからやらなくていいよ、鷹野。それより僕、お風呂入りたいんだけど」

「それは気が利かず、すみません」

「早くしてくれないかな」

「はい。只今準備致しますので、しばしお待ち下さい」

鷹野はにこりと笑ってから一礼すると、すぐにその場を立った。
それを、凜は横目で睨みつける。

「…おい、お前。いくら鷹野さんが使用人だからって、そういう態度はねーんじゃねぇの?」

鷹野がドアの外へ消えると、焔は凜を睨みつけた。
ドアが閉じるまで鷹野を睨んでいた凜は、そのままの目つきで焔を睨み返す。

「君にうちの事に口出しされる権利はないよ。黙って」

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