トラウマだって乗り越えて...
3
「どっかに泊まるお金ないよ…。」
と呟く焔。
「………うちに来るか?」
それがあまりに可哀想で、煌夜は何も考えず言葉にしてから後悔した。
(や…やばい。うちになんか呼んでどうする気だ!?)
だが、焔はキラキラした目でこちらを向き
「い…いいのか!?」
と喜んでいる。
今更やっぱりだめ。なんて言えるわけがない。
「あ…あぁ。とりあえず荊には連絡入れとけよ?心配するだろうから。俺は家に連絡する。」
そう言って煌夜は家に電話をかけるがプルルルル…という電子音が流れるだけで、一向に出る気配がない。
仕方なく電話を切ると、目の前で煌夜の携帯をじっと見つめる焔がいた。
「な…なんだ?」
「あっ!いやっ!別に…」
「電話しないのか?」
「あぁ…するよ!ちょっと行ってくる。」
「…?…ここですればいいだろう?」
立ち上がった焔に煌夜が言うと、焔は頬をぷうっと膨らませ振り向く。
「俺にはそんな便利なもんないんだもん!」
どーせ俺は時代についていけてないよー、といじけている焔。
今では誰でも持っている、特に高校生で持っていない人はいないのではないかというくらいの時代に、まさかこんな近くに持っていないやつがいたなんて…と煌夜は軽く感動を覚えるが、今はそれどころではない。
「俺のを使え。その方が早いだろう。あまり遅くに電話するのは良くない。」
自分って常識人…なんて思いながら煌夜は焔に携帯を差し出す。
その携帯を受け取った焔は、パカパカと開いたり閉じたりしている。
「………なにしてるんだ…?」
煌夜は少し呆れたように焔を見る。
すると焔は、先ほどと同じように口を尖らせ言う。
「だって俺使い方知んないんだもん。」
そうだった…と煌夜は苦笑して焔の手から携帯を取り、アドレス帳から『逢繕 荊』を検索して通話ボタンを押す。
プルルルル…と言う音を確認すると、再度焔に手渡した。
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