[携帯モード] [URL送信]

トラウマだって乗り越えて...
コンビニ.1
コンビニに入ると軽快な音楽が流れ、客の入店を知らせるのと同時に『いらっしゃいませ。』と店員からの明るい笑顔を向けられる。
勝手のわからない煌夜は、取りあえずうろうろしてみることにした。


      ◇◆◇◆◇◆◇      

「遅くなりましたっ!」

焔は裏の休憩室に走りこむと、そこにはパソコンをいじっていた店長がいた。

『いやいや、まだ全然余裕だから。あっ、今日レジ入る前にさっき来た新商品の品出ししてもらえる?ちょっとだけやってあるんだけど終わってなくて…』

「了解です!」

『本当は今レジやってる子に頼もうと思ったんだけど、あの子おっちょこちょいだから。』

「ははっ。確かに。」

焔はパソコンに向かったままの店長との会話をしつつも、指定の服に着替え終えていた。



このコンビニは、前の学校にいたときからやっているバイト先で、店長にはいろいろとお世話になっている。

元々真面目にするときは出来る焔だったが、見た目が如何にもガラが悪そうだったため、どこも履歴書を見ただけで落とされた。
そんな時、真剣に話を聞いてくれ、唯一雇ってくれたのがここだった。
前の学校からは少し遠かったが、時間がある時はいつも長時間働いた。

髪を染めた時も、カツラを被ればいいと笑って許してくれたし、酔っ払いの客に絡まれた時も店長らしく助けてくれた。
当たり前と言われたらそれまでだが、今まで周りにそんな人がいなかった焔にとっては、すごい助けになったのだ。



「よしっ!じゃあ俺、入りますね!」

カツラとメガネを装着し終え、店に出ようとすると、パソコンに向かって座っていた店長がこちらを向いた。

『ところで…新しい学校では何もない?大丈夫?』

店長は簡単な事情しか知らないが、焔の事を真剣に心配してくれていた。
そんな店長に焔は本当に感謝を込めて、

「はい!大丈夫です!ありがとうございます!」

と微笑み、新商品の箱を取って店に出た。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!