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トラウマだって乗り越えて...

「早かったね?」

凜の向かった先…寮の入り口には、電話の相手であった荊が待っていた。

「別に。普通だよ。」

「それより…君から会いに来るなんて…。明日は雪かな?」

ドスッ

「……殴るよ?」

「い…いや…凜さん…。もう殴ってるじゃない…?」

「気のせいでしょ?それより早く中に入りたいんだけど。」

「昨日の傷も治ってないのにぃ…」なんて言いながら、凜の拳が見事にクリーンヒットした脇腹を手で抑えている荊の胸ポケットから、凜は勝手にカードキーを取り中に入る。

「またこのパターンですか!?」

と荊は叫びつつも、慌てて中に駆け込んだ。



部屋に着くと、同室者が戻って来るかも知れないから…という理由で、荊の個別部屋で話すことになった。

部屋を教えてもらった凜は、荊より先に入り、さも自分の部屋のように荊のベッドの上へダイブした。

荊は焔が食堂へ行ったまま戻って来ていないのを確認し、自分を呼びに部屋へ来ないためにと、手紙を置いてから凜のもとへ向かう。

「それで?何かあった?」

ベッドに横たわっている凜の隣に座わりながら、本題を切り出す荊だが、そう簡単に「辛くなった」なんて言うことは凜のプライドは許さないのか、

「何かなかったら来ちゃいけない訳?」

なんて強がってみせるが、実際何もない時に来たことなど一度もないため、何かあったことはバレバレである。
荊は、そんな凜の性格をわかっているのかいないのか、自分もその隣に寝転がり、後ろから抱き締める。

「なら、1日メイドにでもなってくれるの?」

そう耳元で囁くと、凜は耳まで真っ赤にして小さく「バカ…」と答えた。
凜をこっちに向かせてキスをしようとした時。


ピピッと言う音が聞こえ、ドアの開く音が聞こえた。

焔が戻って来たのだ。

荊は飛び起きてベッドの端に座り、慌てて自分の口に人差し指をあて、「静かにね」と声には出さずに口を動かした。

この部屋の大元はカードキーを使わなければ開けられないが、中の各自部屋には鍵が付いていないため、同室者は出入り自由なのだ。
普通はプライベートを尊重する…とかなんとかで勝手に入らないのが常識であるようだが、幼なじみである焔には通用しないであろう。

先ほどの手紙はそのための手段なのだが、果たしてあれが長年会っていなかった幼なじみに役にたつのかは賭けだった。

(昔と変わっていませんように!)とドキドキしながら祈る荊と、いそいそと荊のベッドに潜り始めた凜。

焔が帰ってきてから
―――30秒経過…

――――1分経過…

―――――5分経過…

――――――10分経過…

15分経過した所で、またガチャッと言う音がした。
どうやら焔が部屋を出て行ったようだ。

ほっと胸をなで下ろすと、ベッドの中からすぅすぅと寝息が聞こえてきた。

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あきゅろす。
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