全ては彼の為 あれから数年。 ランチアを操り、自分を恨ますことができた。 そして、かな達は復讐者の牢獄にいた。 暗く冷たい牢獄の床に、僕等を拘束する物。鉄の拘束具は重く、動くのは不便だった。まぁ、牢屋自体が小さいので、行動範囲は狭いが。 隣では犬や千種、ランチアが眠っていた。 それを見ながら、かなは呟く。 「…黒曜編まで、あと数ヶ月…」 つまり、沢田綱吉に会うまで数ヶ月、ということなのだ。 ―――どうして、六道骸になったんだろうか? 千種達に出会ってから、かなは考えていた。どうして自分が六道骸なのだろう?別に前世の記憶が在った訳でもって、頭が良い訳でも(この世界に来てから勉強したから今は頭がいい)、不思議な力を所持している訳でもなかった。 なのに、どうして僕なのだろう。 いくら考えても、答えてくれる人はいなかった。 でも…僕にはこれからやることがある。 黒曜編では、沢田綱吉が大きな成長をする。それは六道骸の仕掛けた事件のお陰なのだ。つまり、僕が六道骸になっている今、僕が沢田綱吉を成長させなければいけないのだ。 だから、僕は沢田綱吉の為に生きていると言っても過言じゃない。 僕が生きるのは彼の為。 彼が生きる限り、僕も生きる。 彼が、強くなるまで。 「全ては、彼の為…」 最後にそう呟きながら、かなは眠りについた。 ...千種side かなが眠りにつくと、千種はパチリと目を開けた。 「骸様…」 ――――昔からだった。 自分達が眠りにつく度に、骸様は呟いていた。 「全ては彼の為」と。 これは一種の口癖のようなもので、骸様はいつも同じ言葉を呟いていた。"彼"が誰のことだかは知っている。 骸様が寝言でたまに呟く、沢田綱吉。顔は知らないが、名前だけは頭に刻んでいた。 沢田綱吉とは、誰ですか? 骸様にそう問うてみたかったが、勇気が出ず、いつも我慢していた。 悔しかった。 自分や犬より、沢田綱吉が骸様の心を占めていたのが。 どうしてそんなに沢田綱吉がいいのか分からない。 俺達の知らない人間、沢田綱吉が憎かった。 骸様の心を、あそこまで引き付けた奴が。 (骸様の心が欲しいと思った) 「…むく、ろ…さま……」 瞳から一筋、涙を零した。 俺達を、地獄から救い出した彼。 俺達から、 ……奪わないで。 全ては彼の為 (彼を思うことで、傷付く人がいるなんて) (かなは知らなかった) [*前へ] |