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逃亡と変質者





人気の無い裏道を、かな達は走っていた。たまに転びそうになる千種を、犬が支える。そして二人は前方にいる人物の後ろを走りつづけた。


───エストラーネオを壊滅させてから、かなは犬と千種を連れて研究所から飛び出した。二人は戸惑いながらも、ちゃんと付いてきた事にに、かなは少し嬉しく思った。

しばらくすると、疲れてきたのか二人の速度は遅くなってきた。休ませてあげたかったが、そうはいかないのだ。




「もう少し、頑張ってください。」




──いつ、奴等が追ってくるか分からないですから。


そう、奴等が追ってくるかもしれないのだ。あそこにいる奴等は全員潰したのだが、あれでも一マフィアの“ファミリー”だ。人数がとても多い。もしかしたら生き残りが研究所の外にいたかも知れないのだ。

捕まる可能性は、無いとは言えないのだ。



犬と千種は一瞬体をビクリと震わせると、顔を真っ青にさせ恐怖から逃げるように足を速めた。







…やっぱり、大人達に植え付けられたトラウマは大きいのか。



そう思うと無償に悲しくなり、かなは眉をよせ、目を細めた。










「ここら辺でいいでしょう」

「はぁ、はぁっ…」

「…っ、はー…っ」




ピタリ、と裏通りのゴミ捨て場で足を止めると、二人はペタリとその場に座り込んだ。




「…無理させてすみません、大変だったでしょう?」

「―――…いい、びょん…」

「…あそこにいた時より、ずっとマシ……」





二人の前にしゃがみ、問えば帰ってきた答えにかなは少々驚いた。


(……あ)




「そう言えば、自己紹介がまだでしたね

僕は六道骸です」



よろしくお願いします、と言えば、二人も名前を言ってくれた。


「城島犬………、」

「柿本千種…。」









―――ーー----




「これ、ください」

「毎度〜。坊や、一人でママのお使いかい?」

「まぁ、そんなトコです」


ありがとうございました、と言いながらかなは店から離れ、表通りを歩いた。


手には真っ赤に熟した、艶々な林檎。大きな紙袋に詰め込まれたそれを見て、かなは嬉しそうに笑った。





「犬と千種、喜んでくれるかなぁ…ふふっ」





自然と漏れた言葉にハッとする。
…やはり、紳士口調とクフフには慣れない。まぁ、こちらに来てからまだ一週間すら経っていないのだから当たり前だけど。



…それにしても、なんであの男の人はお金をくれたんだろう。

実は、この林檎は自分のお金で買ったわけじゃない。元々お金は持っていなかったが。店に行く途中、変な男の人が息を荒げながら「君、可愛いねぇ…オジサンがお小遣いをあげよう、ハァハァ…」と言いながらお札をくれたのだ。正直な話、気持ち悪かったが有り難くお金は頂戴させてもらった。うん、お金は大事だよ!



(男がショタコンの変質者だということを、かなが知ることはないのだった。)







逃亡と変質者
(本当に気持ち悪かった…)







──────
この連載は一応骸受けになっちゃいます


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