さぁ、殺してあげる
※グロ
ボーっとしていると、一人の研究員が、金髪の少年───城島犬の腕を掴み、乱雑に手術台に放った。ドス、と背にぶつかったせいか、犬は小さく呻いた。
休む暇もなく、犬は動けないように固定される。犬の顔はどんどん青ざめていき、歯をカチカチと鳴らす程犬は震えた。
「ひっ…、」
「ウルフチャンネル読み込み開始」
ヴィィィィィン
「ギャアアアア!」
嫌な機械音と同時に、犬は悲鳴を上げ暴れた。しかし、しっかりと固定されているため全く身動きが取れない。
悲鳴を上げる犬に、かなは眉を寄せた。
その後も犬の悲鳴は続いた。
周りの子供は、その光景に怯えながら耳を塞いでいた。
───かなも、そのうちの一人だった。
当たり前の事だった。かなは元は一般人。このような光景に耐えられる訳が無い。
犬の悲鳴を聞くと、視界が水で潤み、喉からは嘔吐感が込み上げ、体は小刻みに震える。
恐怖が、心を支配していた。
────
犬の実験は無事成功したが、彼は気を失っていた。大人達は、それを気にするとこは無く、犬を床に放置した。
そして尚、新しい実験が行われる。
気絶している犬に、友人である柿本千種が駆け寄っていく。
「犬っ…、」
「…柿、ピー……」
ボロボロの友人の姿に、千種は目から涙を零した。
六の眼球が埋め込まれ3日が経った。
最初は痛みで気を失い、1日寝ていた。その後、目を使いこなせるように不安定ながらも特訓をした。
まだまだ弱いが、研究員を殺すくらいには扱えるようになってきたのだ。
手術から日があまり経っていないせいか、目にはガーゼを止めた。縫った傷口がジクジクと痛む。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」
ブチッ、
何かが切れる嫌な音がしたと同時に、一人の子供が手術台から転げるように落ちた。
あまりの痛みで暴れたから、体中に繋がれているコードが切れて落ちたのだろう。そう思いながら子供に目をやると、子供は身体の穴という穴から真っ赤な血を流している。目は限界の限界まで開かれていて、その眼球はグルンと回り上を向いた。すると目からはツゥ、と血が流れ白い眼球は紅に染まった。
───嗚呼、死んだ。
ピクリとも動かない子供を見て、かなは目を伏せた。
「死んだか」
クズが、そう吐き捨てた男に血が上るのを感じた。
死んだのは、お前等のせいじゃないか。
罪の無い子供を実験体にしたのは、お前等じゃないか。
沸々と怒りがこみ上げていく。手に力を込めると、いつからあったか分からない、あの硬い感触。
その存在に、怒りが増幅していった。
「こんな弱い奴、死んで当然か!」
その言葉に、かなの何かが切れた。
「殺す」
バッと立ち上がり三叉槍を構えると、即座に研究員を斬りつけた。
「コラ!何をする!!」
「やめろ!うわーーっ」
ブチリ、槍の先が皮膚を突き破り、柔らかい肉を貫通していく。
男から流れ出る血が槍を伝っていくのを、ピッと払う。
やめろ、助けてくれ。
そんな言葉が聞きたいんじゃない。
そんな事を言うなら、なんでこんな事をしたんだ!
増幅していく怒りに身を任せ、ただただ切りつけていく。
辺りに血が飛び交う。
悲鳴を上げながら逃げ惑う男の首を切断する。
床にはゴロゴロと首や体が転がっていて、中には目玉もあった。
そんな事を気にしたりはせず、僕は切り続けた。
気付けば、真紅の海に僕は立っていた。
(嗚呼、終わったんだ)
「…クフフ。やはり取るに足らない世の中だ」
静かに笑いながら、右目のガーゼを外していく。
───近くには、犬と千種がいた。
「全部消してしまおう―――……、
一緒に来ますか?」
「…っぁ…、」
彼等の方を向き、優しく微笑む。
答えは勿論───、
さぁ、殺してあげる
(さっきまで、血が、殺しが、怖かったのに)
(…もう、怖くない)
壊れていくのは、異端の魂。
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