3
綱吉side
目の前には瞳を閉じている雲雀さん。そしてその横でうろたえている俺。
先ほど雲雀さんは俺に物騒な言葉を残して眠りについた。その後、俺は音を立てないようにベッドに行こうかと考えたが、…いかんせん、相手は雲雀さん。起きる可能性は100%確実だろう。もしも起こしたら……、と考えたとこで止めた。考えただけで体が震えるんだ、想像をしたら………考えるな俺!
チラリ、と雲雀さんに目を向けてみた。やっぱりそこには綺麗な顔。……少しだけなら、大丈夫だよね…?
綱吉は恐る恐る恭に近づき、顔を覗き込んだ。
(うわ、……)
俺は思わず息を呑んだ。透き通る、とまでは行かないが色白に分類される肌、さらりと揺れる黒髪はよく映える。瞼から伸びる細く繊細な睫毛は意外に長い。中学生男子にしては、あまり逞しさを感じない肩のどこに人を咬み殺す力があるのだろうか。
暫く見つめてから、気が付いた。
(…熱い、ドキドキする…)
やけに顔が熱く、心臓がうるさい。
思わず、顔を押えた。
(なんだよ、これ)
風邪なのかもしれない、と思える程俺は純粋でも鈍感でもないのだ。…まさか、俺は………………。
(いや、俺は…京子ちゃんが好きだったんだよ)
…好き、だった?じゃぁ今まで京子ちゃんを見てドキドキしてきたのはなんだったんだ。…でも、俺は雲雀さんをどんな目で見ていた?今までの雲雀さんに対する行動は?言葉は?
(俺は、雲雀さんが…好き?)
そう思った瞬間、俺は今までの行動を理解した。
俺は、好きだったから。雲雀さんを。初めて会ったときから。あの時は気付かなかったんだ、獄寺くんや山本が倒されちゃった恐怖と動揺で…。でも、
(一目惚れ、だったんだなぁ。きっと)
そしたら、目の前にいる雲雀さんが今まで以上に愛しくて、ちょっとクサいかもしれないけど、そう感じた。俺は無意識に雲雀さんに近づいていた。
俺は雲雀さんのどこが好きになったんだろう。
(顔?)
いや、そうじゃない。
(性格?)
何かが、足りない。
(そうか、全部だ)
全部を好きになったんだ。雲雀さんの事をたくさん、いや少しも知らない。けれど、雲雀さんを包む雰囲気が、怖さが、あまりよく見えない優しさが。全部全部、ひっくるめて好きなんだ。
ゆっくり、ゆっくりと顔を近づけていく。
お願い、起きないで。ほんとは寝ている貴方にこんな事をしたかった訳じゃないんです。けど、好きだと思ったら、止まらなくて。
だから、お願いです、起きないで。
柔らかい感触が、唇に触れた。
(夢の中で、微かに唇に温かさを感じたのは、)
(僕の…………気のせい、だったのだろうか?)
[*書類整理]
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