2
「でもさ。」
恭は死体(仮)を足でゴロリと転がす。揺れた拍子にコポリと口から紅が零れる。ひぃ!と悲鳴を上げる綱吉にリボーンはうるせぇ、と蹴りを入れた。
「本当に死んでるのかい?コイツ。」
「…どういう意味だ。」
ピクリ、とリボーンの眉が動いた。
「…ホラ、見てみなよ。」
恭は死体(仮)の前にしゃがみ込んだ。
そして服の裾を掴み、グイ、と首あたりまで持ち上げた。
「チッ。」
リボーンが黒塗りのボルサリーノを掴み、小さく、周りに響かないくらい小さな舌打ちをする。彼には誰にもバレていないと思っているが、生憎恭にはバレていた。
「心臓に穴が一つもない。それどころか怪我一つも無い。」
「あっ…!」
服を捲り上げ、心臓あたりを指さすとようやく気付いたようで。目を見開いて患部だったと思われる場所を凝視した。
恭の言うとおり、そこには傷一つなかった。
「コイツは生きている。
―――そうでしょ?赤ん坊。」
「…だが、ソイツの心臓は止まってる。ついでに瞳孔だって開いてんだ。
…どうする?」
「君は僕をバカにしているのかい?」
まだ気付いてないとでも思っているのか。
彼は表情を崩さない。
恭は不適な笑みを浮かべ、トンファーを構えた。
「――――こうするさ。」
ビュッ、とトンファーを振り下ろした。
(危ない…っ!)
その光景に綱吉はギュッと目を瞑った。
死体(仮)は動けるワケがない。
故に、反撃、ましてや防御も不可能だろう。
―――紅が飛ぶ。
誰もがそう思った。
ガッ!
鈍い音がした。恐る恐る目をあけた。目にはいるだろう惨劇を覚悟して。
…だけど、そこには紅など一切なかった。それどころか、死体すらなかった。
あるのは、恭のトンファーとヘコんだ床だけ。
「いやー、危なかった!」
「ホラ、ね。」
「………………。」
死体の代わりにいたのは、――――先程の死体と思われる、男。
しかも動いて喋っていた。
[*書類整理][咬み殺す#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!