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両親の死。




「可哀想に、恭弥君…。」

「まだ六年生になったばかりでしょう?」

「大変ねぇ…。」

「ご両親が亡くなっちゃって…。」







先日、“この世界の”両親が、交通事故で死んだ。

トラックに跳ねれて即死らしい。
僕もトラックに跳ねれて死んだんだけどね。




悲しみなんて、無かった。


だって、僕が思う両親は、元の世界の人だから。
ただ、親戚が死んだようなものだから、別に何とも思わなかった。





ただ、可哀想、って思っただけ。



前世でトラックに跳ねられた恐怖は、未だに覚えている。





血の気が引き、
寒くなってきて、
気が遠くなって、



訳の分からない感覚に襲われた、"死"の瞬間。



あれ以来、僕はトラックに近付けなかった。
見るだけで、死んだ感覚が蘇ってくるから。



あの恐怖を味わった“親戚”が可哀想、って思っただけ。





そして、葬式が行われた。








来た人は、両親の友人や身内、仕事の同僚など。


僕のクラスメートは来ない、教員も。
何故なら、僕が仕向けたから。




校長を脅し、この事が知れ渡らないように。

面倒臭いことは、嫌いだ。







僕の知人は、誰も来ないように。


そう仕向けた筈、なのに…。


















「恭弥!」




…なぜ、来たんですか。



「泉、先生…?」










いかにも「葬式用」の黒い服を着て、先生は僕の元に走ってきた。


「…校長から、話を聞いたの。」

「…!(アイツ…!)」



言うなと、言ったのに。


だが、来てしまったものは仕方がない。





「…じゃ、最後までいてくださいね。」










僕は、席に戻った。







燃やされていく、二人の体。

降り注ぐ、灰。

泣く、人々。











「今まで、衣食住をありがとうございました。」



僕はそう言い、手を合わせた。






「恭弥君、おばさんの家に来ることになったから。」





葬式後、部屋の隅っこでケータイをいじっていた僕に話しかけてきたのは、親戚らしいおばさん。

大人達は、先程まで何を話していたのか、と思っていたのだが、おばさんの話から僕のこれからについて話していたのだろう。


だが、僕はこの人についていく気は無い。



…大方、保険金目当てだろう。








「いえ、結構です。」



一人暮らしするので、と言えば焦りだしたおばさん。きっと金が無駄になると思ったのだろう。




「でも、ご飯とか色々大変でしょう?」

「いえ、調理は主婦並にできますし、父と母が残したお金で生きていきます。」

「と、とにかく!おばさんの家に来なさい!」




グイッと腕を引っ張られる。

強行手段に出たか。






パシッ




「まだ分からないんですか?」





ぶよぶよと脂っこいおばさんの手を払いのけた。









「金目当ての薄汚い人間に付いていく気は無い、と言っているんです。」





怒りのボルテージが上がったのか、顔を真っ赤にさせた。

そして、勢いよく手を振り上げた。




「このッ…!ふざけんじゃないよ!!!!!!」



腕を、振り下げた。


「うるさいな。」


チャキ、とトンファーを構え、戦闘体制に入る。





だが、




パシッ








「―――無理矢理連れていこうとした挙げ句、子供に手を上げるなんて…最低ですよ。」










振り下ろされた腕は止められた。…泉先生の手によって。








「泉先生…。」

「恭弥、それしまって。あなたも、恭弥を連れていくのは止めてください。」


それ、とはトンファーの事だろう。
僕は言われた通りにトンファーをしまった。





「何言ってんだい、その子は私の姉の子供だよ。連れていって何が悪い!」

「あなたに恭弥を引き取る権利はありません。


――私が恭弥を引き取ります!」









その時の泉先生の瞳は、強い光を点していた。















「大丈夫、恭。」




泉先生の言葉に怯んだのか、おばさんは逃げるように去っていった。
いい気味、なんて思う。



「ん、大丈夫。…あのさ、先生…引き取るって…。」

「あぁ、あれね。…恭、私の家に来ない?」


私、一人暮らしなの。
と笑う先生。



もちろん、







「―――うん。」







僕は、二つ返事で返した。








[*書類整理][咬み殺す#]

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あきゅろす。
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