どろんこの日 並盛幼稚園には、一ヶ月に一回、"どろんこの日"という行事があった。 先生達が砂場に水を撒き、泥を作る。それで園児達が遊ぶ、というものだった。 服が汚れるので、汚れてもいい服を持ってきてください、と保護者に呼びかけたおかげか、園児達は汚れるのを気にせずに遊んでいた。 「くらえ、京子!」 「きゃあーっ、もう、お兄ちゃんのばかぁっ!泥かかっちゃったよー!」 …もちろん、笹川兄妹も。 了平が京子に泥をかける。それを仕返しだ、と言わんばかりに泥を投げ返す京子。それに投げ返す了平。………エンドレス。 その内僕に飛んできそう………。 ビチャッ …………。 ……。 飛 ん で き た よ ! ええええ、言ったそばから飛んできたんですけど!? …あーあ、髪に付いちゃった…。 「恭弥も遊ぶぞ!」 「嫌。」 極限!と叫びながら誘ってきた了平。ウザかったので一蹴。 暑苦しいなぁ、もう。 「恭弥!…遊ぼー?」 「うん。」 控えめに、かつ上目使いで誘ってきた京子。 可愛い、と思いながら、その誘いを即承諾した。 後ろで了平が「何故だー!」なんて叫んでいるけどスルー。 何故って……………、 京子は可愛いから。← 仕方ない。 「…僕も参加するけど、…覚悟してね?」 僕は唇に弧を描き、二人に泥をかけた。 「いやぁ、良かったわね。恭弥くん。」 「そうですね、あの子…少々子供らしいところが無かったので不安でしたが……。」 「笹川兄妹とあんなに泥掛け合っちゃって……。」 後方で、先生がそんな話をしているのを、僕は知らなかった。 「でも、笹川兄妹ってなんで似てないんでしょうか。煩い兄に大人しい妹。」 「あ、確かに。」 この日、僕の服は大変が事になっていた……。 洗濯、大変だなぁ…。 [*書類整理][咬み殺す#] [戻る] |