離したくはない
3
すると、大和はいきなりコップに入っていた酒を一気に飲み干した。驚く夏樹をよそに更に無言でもう一杯作り出す。
「…宮田さ」
大和の声のトーンは低く、いつものようなおちゃらけた様子はない。
急にどうした、と遠慮がちに大和に目を向ければ、険しい表情をした大和と目が合った。
「俺ね、嘘とか隠し事とか大嫌いなんだよね」
「!」
頭をぐしゃぐしゃ掻きながらたばこに火をつける姿は、初めて見た大和の新しい一面であり…少し怖かった。
いつも笑っておバカな大和しか知らない。
「俺は、別に…」
「言いたくねぇことはあると思うけど…俺は宮田の全てが知りたい」
大和の言葉は嬉しかった。
でも、まだ言いたくはなかった。まだ笑って話せる自信もないし、大和の考えが変わらない保証もない。
俯いて黙り込む俺に大和は「はあ」とため息をつく。
「…そろそろ限界かも」
そう言われた瞬間、ついにこの日が来てしまったと悟った。
いつかは来る、そう呑気に考えていたが予想よりも遥かに早く来てしまった今日に涙が出そうになる。
今、大和を失うのはかなり痛い。
大和の存在は、思っているよりもデカかったのだと改めて実感した。
大和ならば変わらず接してくれると信じたい。
言わなくて関係が崩れる位ならば…。
「…あとさ、」
「分かった、話すよ」
全て話してしまおう。いずれ通る道。
だが、そんな決意をしたときに限って、お互いの言葉が被ってしまい顔を見合わせて苦笑する。
「あ、何…?」
「…後でいい。宮田、話して」
一瞬、緊張の糸が解けそうになったが、せっかく決心したのだから先に言わせてもらおう。大きく深呼吸をして俺は口を開く。
「俺さ、……男と付き合ってたんだ」
…遂に言ってしまった。
大和は言葉を発しはしなかったが、目を見開いて驚いていて思わず目線を逸らしてしまう。
「別にゲイじゃねぇんだけど…惚れて」
なあ、大和…お前、今どんな顔してる?
「俺ソイツのせいで高校では友達居なくて…でも、その時はそれで良かったんだよ、ソイツさえ居てくれればって思ってたから」
引いてる?
ゲイじゃないとはいえ、女好きのお前からしたら想像も出来なくてキモチワルイだろ?
「でも、ソイツ本当最低で浮気ばっかされて遊ばれて…マジ辛かった」
まだ募るユウヤへの恋心と、大和に対する恐怖感。
手と声が震えるのを必死で抑えようと頑張る。
「だから、ソイツと別れて学校も辞めた。…以上ッ!!」
なあ、ユウヤ。
お前は、また俺から何かを奪うのか?
…大和を奪うのか?
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