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離したくはない



その時も、アイツは謝らなかった。
それどころ笑ったんだ。


「成行きだよ。あるだろ?そういうの」


俺はその瞬間…ついに限界を悟る。

今まで我慢し続けてきたけど、もうどうでも良くなってしまった。ユウヤと幸せになりたくて離れたくなくて、ずっとずっと我慢してきたのに、自分を不幸にしては意味がないんだ。

そう思ったら怒りを通り越してしまう。


「女ならまだしも男かよ…」


女なら目を瞑ることが出来たが、男なんて信じられない。俺は、ユウヤ以外の男とセックスなど鳥肌が立つぐらい嫌だというのに。

そこまで考えて、自分の愚かさに気付く。
女なら良いとか、そういう問題じゃないんだ。浮気をするということ自体が、まず可笑しなことなのだ。

いつからか、「無理やり付き合わされた」から「付き合ってもらっている」という感覚になり、仕方のない事だと諦めていた。


もう愛されなさすぎて、麻痺してしまっていた。
…だって、俺の代わりなど沢山居るのだから。




だから、ようやくユウヤの家を出る勇気が持てた。
アイツが浮気している間に出る。それは、俺の可愛い復讐。


「…俺んちみたいだな、ハハ」


ユウヤは自分の家に人を入れないから、浮気現場に遭遇したことは無い。だけど、遊びに出掛けたり浮気をしに行ったり俺との時間は確実に減っていき、最後の方はこのユウヤの家で1人でご飯を作り、1人でテレビを観て、1人で眠りにつく…そんな生活。


「…バイバイ」


1年過ごしたこの家に別れを告げ、俺は本当の自分の家へと帰った。






そのまま逃げるように学校も中退。
どうせ友達も居ないし、ユウヤが怒って乗り込んでこられても困るし。

1つ助かった事は、俺の実家が遠いこと。
同じ中学の奴も居ないし、ユウヤの家や学校より少し離れた田舎の方に住んでいるから、滅多に来ることもないだろう。


だけど、しばらくして思った。

俺が直接別れを告げたところで、ユウヤはそれを止めていただろうか?
…きっと、答えはNOだ。


よくよく考えれば、俺はユウヤのことをほとんど知らない。知っていることと言えば、「ユウヤ」という名前と「ヤンキー」ってことぐらい。

年齢だって誕生日だって何してる奴かだって…何も知らない。これでよく付き合ってるって言えたものだ。


「…ハハ」


俺はただ遊ばれていただけで、本気で好きだったのは俺だけだったようだ。

もっと早く…それに気付きたかった。


そうしたら、友達を失うことも、学校を辞めることも…こんなに傷つくこともなかった。


…全てを失うこともなかったのに。




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