離したくはない
3
ユウヤと付き合ったその日に、俺はユウヤの家で抱かれた。
女とセックスもしたことがないのに、初体験が男かよなんて、悲しくて怖くて涙が出た。凄く痛かったし。
「お前、可愛いな」
「…は!?」
「猿みてぇ。可愛い可愛い」
「……」
だけど、行為が終わっても尚泣き続ける俺に、ベッドの中でユウヤが頭を撫でながら笑ったその笑顔が本当に優しく感じて…俺は流されてしまったのかもしれない。
いつ好きになったのかは分からない。
だけど、気付いた時にはどっぷりはまっていた。
「ほら、アイツだよ」
「ホモってほんとに居るんだな」
ユウヤは独占欲が強く、常に自分の監視下に俺を置いた。
俺に友達が居るのさえも嫌がる。
だから、学校ではユウヤの不良仲間と一緒に居て、その他の時間はユウヤの家に居た。
そんな俺から、友達はどんどん離れていく。
ユウヤと関わりたくないのか、男と付き合っていることへの嫌悪感か。
不良仲間も特別会話をすることもなく、気付けば俺は学校で1人ぼっちになっていた。
でも、その時にはユウヤに惚れこんでいて、ユウヤさえ居てくれればそれでいいと思っていた。
それなのに…アイツはいとも簡単に俺を裏切った。
「…うそ、だろ」
ユウヤは何度も何度も浮気を繰り返す。
俺よりも何百倍も可愛い女と。
「ユウヤさんモテるから仕方ねーよ。つうか、恋人ってだけで夏樹くんは凄いし」
「そ…うなんだ」
不良仲間で1番気さくに話してくれる橋本(はしもと)は、驚いた様子もなく当たり前かのように言ってのける。むしろ、ちゃんとした恋人が出来たことの方が橋本からしたら驚きだったそうだ。
「(いつか…いつか止めてくれるはず)」
最初は信じられなくて、毎日泣いた。
辛くて死にたい気持ちだった。
「俺が好きなのは夏樹だけだから」
「…もう浮気しないで」
「分かったよ」
ユウヤは、初めこそ優しく宥めてくれていたが、俺にバレてからはその行為も言動もエスカレートしていった。
泣きそうな俺に「今日のセックスはつまんなかった」なんて報告してきたりすることもあった。
悪びれた様子もなく、謝りもしない。
ただ、大好きで嫌われたくなくて…俺はその度許してきた。
本当は、頭がおかしくなる位嫉妬していたのに、途中から笑顔で許して1人で泣いていた。ユウヤの前では極力涙は見せないように努力するのが精一杯。
何回浮気されたか数えることに疲れるぐらい、アイツは浮気を繰り返す。
でも、遂に我慢の限界がきた。
…男と浮気をしたことによって。
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