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離したくはない




「…ん」


何か、ゴソゴソする。

変な違和感を感じ、目を開けると俺は大和にキスをされていた。


「んんっ…!」


くちゅくちゅと嫌らしい音が静かな部屋に響き渡る。なにせ、ディープキスをされているのだから。


「大和…ッ!」


驚いて身体を押しのけ名前を呼ぶと、大和はそのままゴローンと床に寝そべって動かなくなる。


「やま、と…?」


名前を呼んでも反応なし。
もしや…寝ぼけてた?


「…ふざけんな、どんだけ飢えてんだよ」


女好きの大和のことだから、女とキスしている夢でも見ていたのだろう。ゴシゴシ唇を拭いながら恨めしげに睨んでやる。

ただ、触れた唇に…少しだけ悲しい気持ちになる。


「(もう…アイツじゃなくなった)」


事故とはいえ、アイツ以外とのキス。
最後にしたキスはアイツじゃなくなった。

わがままで自己中で浮気者で最低のくせに独占欲が強くて俺を縛り付けたアイツ。
大嫌いで…大好きなアイツ。


もう戻れないと分かっていて、自分から離れたはずなのに、俺の中にはまだアイツが居る。

忘れたくて仕方がなかったのに、キスぐらいはアイツとの思い出として残しておきたかった、俺の矛盾する心。


バカ過ぎて笑える。
もう過去の話なのに。
いつまでも引きずっていて女々し過ぎる。


「(丁度…良かったのかな)」


早く忘れたかったから、良かったはずなのに泣きたい気持ちになった。




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あきゅろす。
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