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離したくはない



「だ、誰だって、んなこと真顔で言われりゃビビるっつの」
「ふーん」


少し心臓がバクバクしてしまっただけに、ニタニタ笑う大和をぶん殴りたくなる。


「…ふざけんなっつの」


俺は小さな声で呟きながら、アイツの顔を思い出してしまった。



『お前、意外と何も出来ないんだな』
『そうか?男なら普通だろ』
『1人暮らししてんなら少しは覚えろよな』


料理とか、何も出来なかったアイツ。
俺に笑顔でこう言ったな。


『じゃあ、お前が俺の嫁に来いよ』



ピピーッ!

ぼーっとしていたらしく、画面にはGOALの文字。


「宮田、マジ弱えー」


隣で笑う大和の姿に、俺は大和の家に居たんだと思い出す。うっかりトリップしていたようだ。


「…うそーん」
「集中してくれません?」
「あ、悪り。ちょっと酔っぱらってきた」


誤魔化すように笑いながら、冷静を装って試合を再開する。


「次は俺が逆転したる」
「宮田じゃ無理無理ー」
「何ぃ?」
「うははははッ!」


忘れたいのに忘れきれていない。
俺はまだ…アイツに恋をしているんだ。



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