Eternal… 5 しばらく談笑しながらチラリ、と時計を見るといい感じの時間になっていた。 「(セットは美容院行くか…)」 いつもは家で髪をセットしていくが、さすがにバレそうだと思い今日は美容院に行こうと決めた。帰りは、店でシャワーでも浴びて帰ろう。 それよりも、隣で楽しそうに笑う優に少し元気が戻って安心した。 時々近付くと無意識に怯えたような目をしていたが、しばらく居る内にその恐怖感が薄れているようだ。 「(俺に安心するなんてな)」 抱かれたい、と人気の俺に心を許す辺り流石だと笑いそうになる。ある意味、大物だよコイツは。 「じゃあ、そろそろ行くわ」 「ああ、頑張って」 「宅配以外開けんなよ?」 「はい」 「ちゃんと確認してから開けること。鍵も常にかけておくこと」 「…分かりました」 子供に言い聞かせるように念押しすると、部屋を出て外から鍵を掛ける。 「タクシー1台お願いします」 外に出てタクシーを呼び、待つ間にたばこを1本吸う。 自分の家なのに、何となく優の前で吸い辛かった。 「(先にシャツ取りに行かねーとな)」 俺は、人の世話をするような優しい人間じゃないのにな。…そう思うと笑ってしまう。 別にここまでしてあげる必要もなかったが、あの場に遭遇してしまった以上、途中で投げ出すことも出来ない。 ああいう経験をすると、後にトラウマになるケースが多いから、なるべく避けてあげたかった。 でも、自分の心に問う。 …それだけなのか? 心を許した人間以外、家に招き入れない。 それどころか、家の場所すら教えない。 簡単に優を連れてきた自分に多少なりとも困惑している自分が居る。 「及川さんですか?」 「はい、○○までお願いします」 少ししてタクシーが来て行先を告げる。 チラッと自分の家を見つめて目を伏せた。 「(何してんだろーな、俺)」 本当に、自分が意外過ぎる。 でも、あの泣き顔を見た時に出てきた感情は、確かに怒りだった。 俺は優に馬乗りになっていた男を本気で殴っていた。 「…汚れて欲しくなかったのかな」 「え?何か言いました?」 「…いえ、何も」 きっと、俺のようになって欲しくなかったんだろう。 佐藤 優には、ずっと純粋で無知で綺麗な心で居て欲しい。 …そんな事を思ってしまったんだろうな。 [*前へ][次へ#] [戻る] |