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夢小説
KAITOの想い


少しして、ベッドからマスターの規則正しい寝息が聞こえてきた。
僕は音をたてないように、そっとベッドに近づいた。


「マスターの寝顔……可愛いな」


思わず頬が緩みそうになる。

今、僕の目の前に、手を伸ばせば触れられる距離にマスターがいる。
ずっと………ずっと好きだったマスターが近くにいる。


「本当に夢みたいだ……」


僕はマスターの頬に手を添えた。


「柔らかい………」


当たり前のことだけど、自然と口にでた。

マスターは僕と違って、ちゃんとした人間だ。
僕はさっきまでPCからマスターを見ていることしかできなかった、人間の手によって作られたプログラムだ。
今はなぜかマスターと同じ人間になっているが。


「…夢ならずっと覚めないで……」


起きたら夢だった、なんて嫌だ。
出来ることならマスターとずっと一緒にいたい。


「……痛い…」


恐る恐る自分の頬をつねってみたが、ちゃんと痛みを感じた。


「………そういえば、レン君大丈夫だったかな」


僕はこっちに来る前の、まだPCの中にいた時のことを思い出した。












その時の僕は、PCをしているマスターをディスプレイ越しに見ていた。


「マスター…今日も元気そうでよかった…」
「KAITO兄ぃまたマスターのこと見てんの?」


いつの間にか隣にいたレン君がため息交じりにそう言う。


「あ、レン君」
「お前ホントにマスターのこと好きだよね」
「もちろん。ていうか、レン君だってマスターのこと好きなくせに」
「なっ…!?」


分かってるんだからね、という含みを込めて言うと、レン君は顔を真っ赤にして言った。


「べっ別にマスターなんか好きじゃねえよ!!!てか、どうでもいいだろ!!そんなこと!!」


そう強がって言っているが、耳まで真っ赤なため説得力がない。


「あはは、レン君耳まで真っ赤だね」
「う、うるさい!!バカイトのくせに!!!」
「あははは」
「笑うな!!!」


本当に素直じゃないな、レン君は。
…あれ?
レン君みたいな性格の人をなんて言うんだっけ?


「うーん……」
「…どうしたん?KAITO兄ぃ?」
「ねえ、レン君みたいな性格の人をなんて言うんだっけ?」
「はぁ?知らないよそんなの」
「えーと………あ!!ツンデレだ!!ツンデレ!!」
「黙れ!!!このヤンデレ!!!」
「僕はヤンデレじゃないよ?」
「いや、お前はヤンデレだから」
「えー?そうかな?」


ていうか、ヤンデレってなんだっけ?
………まぁいっか。


「あ、そういえばレン君何か僕に用があって来たんじゃないの?」
「あぁ。そういえばそうだった」
「どうしたの?」
「さっきガクポがKAITO兄ぃのこと探してたよ」
「ガクポが?」
「うん」
「わかった。じゃあ、あとで行くよ」
「絶対だぞ?」
「わかってるよ」
「じゃ、俺はもう行くから」


そう言ってレン君は立ち上がった。


「あ、うん」
「……ん?」


レン君はなぜか僕の方を見て眉間にしわを寄せていた。


「どうしたの?レン君」
「お前、なんか体光ってない?」
「…え?」


自分の体を見てみると、レン君に言われた通りに光っていた。


「え?なにこれ!?バグ!?ウイルス!?」
「お、おい。落ち着けって!」


予想外のことで、僕はパニックになっていた。
それを見てレン君は踵を返した。


「ちょっと待ってて!今ミク姉ぇとか呼んでくるから!」
「う、うん。わかった。…って、うわぁっ!!!」


レン君が走りだそうとした瞬間、僕の体が眩しいほどに光った。


「!?KAITO兄い!!??KAITO兄い――!!!」


そのレン君の声を最後に、僕は意識を失った。












「――それで、気づいたらマスターの世界にいたんだよね……」


もしかしたら、レン君もこっちの世界に飛ばされたりしてないかな?


「怪我とかしてなきゃいいけど………」


そういえば、ガクポも僕に用ってなんだったんだろう?

……PCの中の世界のことも気になるけど、今はこっちの世界で少しでも多くマスターといれるようにしよう。

またいつ、PCの中に戻ってしまうか分からないから。


「……マスター……大好き…」


僕は布団の中にあるマスターの手ぎゅっと握った。

目が覚めた時、マスターが僕の前からいなくならないように…。


「…おやすみ……マスター…」


これが夢でないようにそっと願いながら、僕は目を閉じた。






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