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夢小説
やっと会えた


「……え?」
「マ…マスター?」


今この瞬間は夢でも見ているのだろうか。
いや、そうとしか思えない。

だって、今まで目の前にある私のこのPCで調教していたKAITOが画面から飛び出して来るなんて。
いくらなんでもありえない。


「…………」


…どうしたらいいんだろう。

人間は本当に驚いた時は声も出なくなるらしい。

そんな驚きを隠せないでいる私を余所に、目の前に立っているKAITO(らしき人)はみるみると笑顔になっていく。


「…マスター…。マスターだ!!!」


そう言うと、KAITO(らしき人)は思いっきり私を抱きしめてきた。


「!!!!!?????」
「やっと…っやっと会えた……!!」


どんどんと抱きしめる力を強めるが、その一方で肩を震わせて頬をほんのりと染め、ボロボロと泣きはじめた。

とりあえず、この人が誰なのか確かめないと…。


「あ……あああ、ああの…、ど…どちら様ですか…?」
「なに言ってるんですかマスター!僕ですよ、KAITOです!」
「いやいやいや、KAITOはプログラムだからこっちにいるわけないですから」
「じゃあ僕は誰なんですか!」


いやあの、こっちが聞きたいんですけど。
私に聞かないでいただきたい。

確かに見た目はKAITOだ。
声もKAITOに似ていないわけでもないが、PCソフトの中のKAITOはどんなに時間をかけて調教してもカタコト言葉に少しでもなっているはずだ。
しかしこの自称KAITOさんは少しもカタコトではなく、人間そのものの話し方だ。


「だって、KAITOはカタコト言葉のはずじゃないですか」
「え…?あ、そういえばカタコトじゃない…!え、なんで!?」


今気づいたんかい。


「それに、貴方がKAITOってことを証明は出来る物はあるんですか?」
「…証明…ですか?」


うーん…と首をひねって考える素振りをしてから、あっ!と顔をあげた。


「証明かどうかは分からないんですが、ずっとPCの中からマスターを見続けていた僕だから分かることは沢山ありますよ!」
「………例えば?」


そんなまさかと思いつつも、一応聞いてみる。


「えっと…、学校で嫌なことがあった日とか気晴らしで僕に卑猥なことを言わせたりとか、僕の総受けPCゲームを作ってレン君とかガクポとかAKAITOとかに僕を襲わせたりとか、僕の淫乱なイラストを描いてイラストサイトにあげたりとか、他にも小説の中で僕をぐちゃぐちゃに犯し…」
「あーー!!あーー!!あーーーーー!!!」


なんて奴だコイツ…!!
そんな恥ずかしい事を真顔でスラスラと言いやがって!!←

私の顔は茹でたタコのように真っ赤だ。


「どうしたんですか?マスター顔真っ赤ですよ?」


お前のせいだバッカヤロー!!←

まあとにかく、この人がKAITOということはよくわかった。
さっきKAITOが言ったことは事実だし、それにそのことは24時間私を見ていないと分からない事ばかりだ。
それに、私が腐女子だということは誰にも言っていない。


「あの、それで僕がKAITOだって認めてくれました…?」
「う、うん。もちろん」
「…!ありがとうございます!マスター!」


ぱぁっ!と眩しいくらいの笑顔を浮かべながら、また私に抱きついてきた。


「!!!だ、抱きついてこないでくださいよ!!」


男の人に抱きつかれたことなんか全然ないから、ドキドキしすぎて心臓が今すぐにでも破裂しそうだ。
しかも相手は私の大好きなKAITOだ。
こんな調子じゃ私の体がもたない。


「…………」
「……?な、なんですか?」


抱きついた姿勢のまま、まじかで私の顔をまじまじと見ているKAITOに居たたまれなくなって声をかけた。


「…なんでマスターは僕に敬語使ってるんですか?」
「なんでって……なんとなく?」


そんなことかと拍子抜けしていると、真剣な顔つきでぐいっと顔を近づけてきた。


「僕に敬語は使わないでください!なんか他人行事みたいで嫌です!」
「そっそんな事急に言われても無理ですよ」
「敬語は使っちゃダメですってば!!」
「…!!?」


少し怒った顔でもっと顔を近づけてきた。
お互いの顔の距離は5センチもない。
KAITOの息が、話すたびに私の唇に当たる。
私の顔はもう赤を通りこして、真紅に染まっていることだろう。


「わっわかった!!!敬語使わないから離れてよ!!」
「本当ですか!?」


KAITOはそう言って私の体から離れた。

やばい。
私、明日が寿命かな。←

毎日こんなに抱きつかれたらどうにかなってしまいそうだ。


「…KAITOも敬語使わなくていいよ?」


心を紛らわすためにKAITOに言うと、とんでもないとばかりの顔をして私に言った。


「そんな!マスターにタメ口なんて聞けません!!」
「別に私は気にしないけどな」
「僕が気にします!!」
「…はぁ…そうですか」


……こんな言い方は酷いとは思うけど、コイツめんどくさい←

あ、そんなことより、大事なことがまだ未解決のままだった。


「それよりKAITO。どうやってPCから出てきたの?」
「わかんないです」
「………は?」


ニコニコ笑顔でキッパリとそう言うKAITO。


「いつも通りにPCの中からマスターを見ていたんですが、急に目の前が眩しくなって目を閉じて、次に目を開けた時にはもうこっちにいたんです」
「…そっか」


PCがバグった…とか?
いや、バグって2次元のキャラが出てくるとか聞いたことないし。


「あの、マスター。考え込んでるところ悪いんですが…」


KAITOが遠慮がちに言った。


「ん?なに?」
「明日って学校ですよね?」
「うん。そうだけど?」
「もう一時半ですけど寝なくて大丈夫ですか?」
「……え?」


反射的に壁にかけてある時計に目をやると、もう針は深夜の一時半を指していた。


「え!?やばっ!明日は朝部活があるから早起きしないといけないんだった!」


私はすぐにベッドに飛び込んだ。


「ごめんねKAITO!私もう寝るから、私の部屋からは出ないでね!」
「はい。分かってますよマスター」


ニコッと笑顔を私に向けて、KAITOは言った。


「私の部屋の中だったら好きにしてていいから。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさいです、マスター」


そして私は深い眠りについた。







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