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Spica
僕の言葉は


本当に、見ていてイライラする。


僕がイラつく理由などないはずなのに、心のどこかで、何かが神経を逆撫でする。






「具合はどうですか?」


僕は保健室に入り、彼女が居るであろうベットのカーテン越しに声をかける。


…返事がない?

寝ているんでしょうか?


申し訳ないと思いつつカーテンを開けると目の前に何かがフッと現れると共に身体に多少の重みを感じる。



「彩…?」


行き成り飛び乗ってきた彼女に声をかけても返事は返ってこない。


まさか、寝ぼけてるとか?…いや、彼女に限ってそれはないだろう。



「彩?どうしました…?」

「颯斗…」


ボソッと呟かれた声に僕はどうしましたか?と、もう一度聞き返す。



「頭痛い…」

「どう痛いんですか?」

そう聞けば「…割れる」とだけ彼女は答える。

割れる…?どういうことでしょうか?


「煩いの」

僕はその言葉に首を傾げる。

煩くは無い。ただ放課後だから授業中よりは煩いと思いますが…。


「頭の中で、みんなが言うの…」

身体を離し、彩を座らせると、彩は頭を抑えながらいつもの彼女からは予想できないか細い声で言った。


「なにを、ですか?」

そう訊ねてみても彼女は身体を震わすだけで何も喋ってはくれない。


これは、陽日先生を呼んだほうがいいんでしょうか…?


「直兄さんには、言っちゃ駄目…だから」

その場を離れようと立ち上がると、何も喋らなかった彩はそう言った。



「絶対にだから。…ごめん、颯斗」


彼女は未だ身体を振るわせつつもそう言葉を繋ぐ。


「生徒会、頑張ってね」

彩は薄っすらと笑みを浮かべる。


全く笑えていないのに、どうしてそう、笑うんですか?


そんなこと、彼女に聞かなくても僕は知っている。


だから、なんとなく、今彼女を一人にしてはいけないと感じる。



「彩は僕にそんなに生徒会に行ってほしいのですか?」

「え、…う、うー…」


そう言うと、彩は焦った様に言葉を必死に繋ごうとする。


「今日、本当は活動日じゃないんです」

「ん?」

「だから、今日は彩に何と言われようと傍に居ます」


僕がそう言うと、目の前の彩は少し困ったような表情を浮かべた。



「彩は、一人じゃないんですよ」


暫く彩の頭を撫でていると、彼女が不意に顔を上げた。



その彼女の表情を見て焦るのは僕。



彼女の頬をゆるゆると伝うそれに目を見張る。



「私…、一人じゃ駄目なの…」



「…大丈夫ですよ、彩は、一人じゃありませんから」



宮地君だって翼君だって、月子さんだって東月君たちだって僕だって…










今にも潰れてしまいそうな彼女を、











僕は繋ぎ止めるように抱きしめた。














僕の言葉は僕が言って欲しかった言葉だった

(今日もまた、錯覚を起こす)
(そしてまた僕は、彼女に昔の僕を重ねているんだ)


10/04/24

今回は颯斗視点のお話
次は主人公のみ、かな



*#
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