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拝啓、愛しい貴方へ




今まで、死ぬことなんて怖くなかった。



自分が、死ぬことを望んでいたから、むしろこうして死ねるならいいと思った。



今から3年前、あなたに出会うまでは。











私は3年前、結核だとわかって入院した。

ちょうど、受験生になったばかりの時期だった。


一度はちゃんと治療し、もう大丈夫だと言われた。

再発率も約5%と低い。

だからまさか、自分がまたこうして結核にかかるなんて思ってなかった。


それから二度目の入院で、私は彼と出会った。


屋上で、ボーっとしていた彼に声を掛けたのは私。


なんだか、すごく話をしたくなった。


それから話していくうちに、仲良くなった。


先生に許可をもらったのか、自分の体調がいいといつもお見舞いと言って、話し相手になってくれた。



いつからか、私は哉太を好きになってた。


先生に長くないといわれてから、私はきっと恋愛なんてしないんだろうな、と思ってた。


きっと、哉太にも迷惑をかける。


だから、この想いは胸のうちに秘めておくつもりだった。











「彩…」


ぼんやりとする意識の中で哉太の声と機械の定期的な音がやけにはっきりと聞こえる。


「哉太…」


目を開けると入ってくる哉太。


なんで、そんな顔してるの?


「連れて行ってやれなくて、悪い…」


そんな顔しないでよ、そんな顔、させたい訳じゃない


「違うよ…、わた、がでれなか、たから…」


繋がれた手のひらから、心地良い体温が伝わってくる。

まだ、生きてるんだ。


「私、哉太に会えてよかったよ」


私、きっと哉太に出会えてなかったら、


もっと早く、死んでたかもしれない。


「哉太がそばにいてくれて、うれしか、た」


いつも一人だった私のなかに、

入ってきて、一緒にいてくれた。


「…好き、だ」

「え、」



「好きだ」


どうして、だろう。


「哉太…私、怖いよ」


怖い、怖い、コワイ、こわい

死ぬのがこんなに怖いって感じるのは、初めてかもしれない。

だって、死んだら、哉太は私のこと忘れちゃうでしょ?

私のこと好きだって言ったって、いつか忘れちゃうでしょ?

そんなの、私、嫌だ…。


もっと一緒にいたかった。

一緒に、遊びたかった。

もっともっと、哉太のこと、


たくさん知りたかった…―――




「…っ彩!?」


「かな、た…」


どうしよう、目を開いていられない、

身体の力だ抜けていく。


まだ、最期まで、見て、感じていたい。





「私、も」





好きだから、









「…彩っ」











哉太、私の想いは、ちゃんと伝わりましたか?







私、とっても幸せだった。








初めて好きになった人が、最期に好きになった人が、








哉太でよかった。












どうか愛しい貴方へ









私は貴方の幸せを願います

(ずっとずっと、大好きです)

(あれ…?)
(どうかしたか?哉太)
(いや…、…今日は天気がいいなって)
(…?変な哉太)

10/05/07


死ネタで申し訳ない;
…難しいです





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あきゅろす。
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