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涼宮ハルヒ
会長様の好きな人


その男は「会長」と呼ばれていて、
生徒会長のくせに煙草なんかを吸っていて、
長身で眼鏡で
顔はいいけど性格は………

苦手だ。










そんな会長様に何故俺が呼び出しをくらっているのか、それは俺が問いただしたいくらいだ。

「で、なんの用ですか」
「別に、なにも。」

この男は…っ。
一体俺が何をしたって言うんだと思いきや、用が無いのに呼び出した?!

「用が無いなら帰ります。SOS団の事で文句があれば団長の涼宮ハルヒにお願いします!」

荒っぽく言って帰ろうとした瞬間に腕を掴まれて、それは叶わなかった。

「まぁ、待て」
「用が無いなら帰ります!俺は忙しいんです!」

ついさっきもハルヒに振り回されて散々だったってのに、
またこんな奴に好き勝手されたら俺の身が持たない。
腕を振り払おうとブンブン振り回してみるけど、掴まれた腕はびくともしない。
寧ろ段々掴まれている俺の手首が痛くなってきて………。

「離して下さい……腕痛い………っ」

顔を歪めながら言うと会長は俺を見て鼻で笑った。

「こんなのがいいのかね、アイツは……。」
「?」

何の事を言っているのかはわからなかったが、
それを考えるより先に腕を放された事でそっちに意識が行く。

「何の用ですか!暇つぶしですか!?」
「……暇つぶし、ね。…まぁ、そんなトコ」

そう言うと会長は自分の座っている椅子の前に俺を立たせた。
俺はされるがままで取り敢えずは当分様子を見守る構えだ。
もちろん、変な事をされたら問答無用でブン殴る!

「お前、古泉の事どう想ってる?」

突然出てきた名前に体が強張る。どう? どうって……。

「好きかって、聞いてるんだ」
「はぁ?!」

なんで、息なり古泉なんだ…とは思ったが、それはあまり気にならなかった。
理由は多分…俺が古泉の事を好きだから。
だからこの質問がきて動揺こそしてはいるが、聞かれた理由はなんとなく想像が付く。
きっと俺が古泉の事を気にしてる風に見えたんだろう。そしてそれは当たってる。

「好きかって聞いてンだよ」
「あなたの質問に答える義務はありません」

そう言って会長に背を向けると、また腕を掴まれて今度は会長の胸に思いきり引き寄せられた。

「のっ、わっ!」

吸い寄せられるように会長の胸へ飛び込んで、抱き締められてしまった。
それもこれも会長が俺の腕を引っ張ったからで、決して俺の本意ではない!不可抗力だ!!

「古泉の事が好きじゃないなら……俺の事を好きになれよ」
「なっ!??」

なんと言うとんでも発言だ。
まさか男に告白(?)される日が来るとは……。
しかも、あの会長に。
…それにしても、古泉を好きじゃないなら自分を好きになれって…ちょっと強引じゃないか?

「寧ろ、古泉の事が好きでも俺の事を好きになれ」

なんたる強引!
てか、寧ろってなんだ!
古泉の事を好きだったら会長の事は好きにはなれないだろう!古泉が好きなんだから!!
つーか、俺は古泉が好きなんだよ!だから会長の事は好きにはなれないんだよ!古泉が好きなんだから!!
どうしても古泉が好きって気持ちが勝っちゃうんだよ!古泉が好きなんだから!!
なんか語尾みたいになってるんだよ!古泉が好きなんだから!!

会長は俺の腕を引っ張って顎を掴み、俺の顔を持ち上げた。
キスされる??!! と反射的に思い、会長を思いきり突き飛ばした。

「や…っめろっ!!」

突き飛ばした、と思ったが会長の体はびくともせず、変わりに俺の体が会長から離れて行く。
足が縺れて、体が蹌踉ける。

「うわ……っ」
「危ないっ!!」

転びそうになった寸での処で会長が俺の背中に腕を回し、捕まえてくれた。

「あ…、どうも」

一応助けてもらったのでお礼を言う。
と、会長に抱き締められている時…

『ガチャッ』

なんの前触れもなく生徒会室の扉が開いた。
そこにいたのは………

「………………古泉……」
「……………あ、すみません……」

そこに立っていた古泉は少し唖然とした後、
まるでイケナイ場面でも見たかのように、そそくさと扉を閉める。

「あ、待て!古泉!!」

古泉を追おうと手を伸し、走り出そうとした処で会長に抱かれているのに気付いて、
振り払おうとした。でもやっぱり俺は会長の力には叶わなくて…。

「離して下さい!」
「嫌だと言ったら?」
「あなたを殴ってでも古泉を追います!」

そう言ったら会長は「殴られるのは嫌だな」なんて他人事のように余裕ブッこいた言い方しやがって…!
俺は早く古泉を追って、違うんだってちゃんと誤解をとかないといけないのに……。
別に付き合ってる訳じゃないから「そうしないといけない」訳じゃなくて、俺が誤解されたくないから
「そうしないといけない」んだ。
だから、なかなか腕を離さない会長を本気でブン殴ろうと思った時…
今まで束縛されていた体がふいに自由になった。

「まぁ、そこまでする理由もないし。こんな事で殴られるのは割に合わないからな」

そう言って今まで俺の腰に絡まっていた会長の腕がするりと抜けた。
自由になった俺は会長を振り返る事無く生徒会室を出た。

部屋を出て、左右を見渡すも、古泉らしい人陰はなく、SOS団部室に向けて廊下を走っていると
階段辺りで古泉の後ろ姿が見えた。
後ろ姿だけでもわかる。あの背丈、あの体格、あの髪、あの仕種。見間違えるはずはない。
……俺の大好きな人……

「古泉!」

名前を呼ぶとびくっと反応して、振り返る。
それはやっぱり俺が探し求めていた古泉で……。

「キョン君??!」

驚いたように振り返り、俺の元に駆け寄ってきた。

「どうしたんですか?!会長は??!」

やっぱり誤解をしているようで、古泉は見当違いな事を言ってくる。
俺はそんな古泉の腕を引っ張って自分に寄せた。

「古泉、違うんだ!…会長とは何も無くて、会長は只コケそうになった処を助けてくれただけなんだ!」
「何故、そんな事を僕に言うんですか…?」

古泉のその言葉に少し傷ついた。
なんでって思う気持ちはわかる。でも、そんな風に言わなくてもいいじゃないか。
誤解されたくなかったんだ。お前だけには…。

「僕が言いふらしたりしないのは、あなただってわかるでしょう?」
「違う!お前に誤解されたくなかったんだ!!」

俺が必死にそう言っても、古泉はまた見当違いな解釈をしたようで…。

「…別に追い掛けてきて言わなくてもいいのに……」

変な事を期待してしまいますよ? その古泉の言葉に俺は耳まで真っ赤になった。
本気で言ってる訳じゃないなんてわかってる。でも嘘でもそう言ってもらえる事が嬉しかった。

「古泉…俺……!」
「キョン君!!」

俺の言葉を遮るように古泉が言葉を挟む。
驚いて古泉の顔を見ると、古泉は珍しく頬を上気させて、真剣な顔をしていた。

「あの…、僕…キョン君に、言っておきたい事があるんです!」
「………………なんだ?」

何を言われるのか、次の言葉がわからくて、不安になる。
俺に言っておきたい事、このタイミングで……。

「僕、キョン君の事が……」

俺の事が?
何?好き?…それとも……嫌い?
淡い期待と、強い恐怖。

「好きです」

その言葉を聞いた瞬間、理解するより先に涙が出た。
頭が混乱して、なのに体は勝手に動く。
自分でも整理出来ないうちに俺は古泉に抱きついていた。
今までずっと聞きたかった言葉、永遠に聞く事はないと思っていた言葉が俺の耳に届く日がくるなんて…
夢みたいだ。
夢なら醒めるな、そう思いながら俺は思いきり古泉に抱きつく。
夢なら夢でいい。俺は一生この夢の中で暮らす。
そんな物騒な事を考えながら古泉の顔を覗き込むと、古泉は目を見開いて、真っ赤になっている。
何が起きてるのかわからないって顔だ。

「古泉…、俺もお前に言わなきゃいけない事がある」

真っ赤になっている古泉に抱きついたまま、体は密着していて、
8cmくらい上にある古泉の瞳を逃がさないように見詰める。

「実は…俺もお前の事が好きなんだ……」

そう言うと、古泉は耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに俺の事を抱き締め返してくれた。

「本当…ですか?」
「嘘なんて付く訳ないだろ?」
「……………キョン君も…僕の事……」
「大好きだ」

言った瞬間に古泉の瞳が揺れて、涙が溢れてきた。
古泉の涙は次々と古泉頬から、俺の頬に落ちてくる。
古泉が泣いている姿なんて、想像もつかなかったけど、その姿はとても綺麗で、
薄桃色に染まった古泉の頬は可愛らしく、真っ赤な唇は色っぽい。
廊下の端、階段の真ん中で男同士で抱き合って、泣いて、馬鹿みたいに愛の言葉を囁き合った。
古泉顔が見たくって顔を上げるとすぐに古泉と目が合った。

「古泉……」

囁くと、自然と古泉の顔が降りてきて、俺を頬に唇を押し付けた。
離れていく唇に俺の涙がついて、少し濡れている。
それがいやに卑猥に見える。
俺はその唇が欲しくて、それに俺のを触れさせたらどんなに気持ちいいだろうって、
そればかりが気になった。
吸い寄せられるように唇を追うと、それに気付いた古泉が俺の望むそれをくれた。
それは思っていた通り柔らかく、思っていた以上に熱かった。

最初は唇を触れさせるだけだったそれがどんどんエスカレートしていってディープなものになる。
俺のセカンドキスは事故なんかじゃなく、大好きな人とする蕩けるようなキスだった。
学校で、いつ人が来てもおかしくなんてないのに、俺達はそんな事も忘れて
ただキスに夢中になっていた。

「キョン君…好きです。大好きです……っ」

古泉がキスの合間に言ってくれる そんな言葉も、全部俺だけのものにしたくて、
俺は古泉にしがみついて夢中で古泉の舌を貪った……………。







【fin】


【あとがき】
話しの流れが早くてすみません。
いつだったか、結構前に書いたお話です。pcの整理してたら出てきました←
メモには「話しが勝手に暴走して読み手を置いて行ってる感じ」と書いてありました。…それでボツにしたのか…。
しかし本当はこの次(続き)の話しを書きたいが為に書いた話しなのですが…。




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