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涼宮ハルヒ
カウントダウン
いつもの文芸部室。

「なぁ、古泉…。お前も好きな奴くらいいるんだろ?なぁなぁ誰 好き?」

好奇心で聞いてみた。答えは何となく想像がつく。きっと「今の自分は恋愛なんてしてられない」とか言うんだろ?
そんな風に軽く考えていた。
しかし、古泉の返答は俺の想像を遥かに超えていた…。

「成田さんが好きです…。クラスメイトの……」

古泉は頬を赤らめて恥ずかしそうに、それこそどこにでもいる男子のごとく平凡な返答を俺に寄越した。

「成田…、さん……?」

誰だそれは。

「はい、成田さんです。席が僕の前なんですけど…、とても優しくて可愛らしい方なんですよ?」

これがハルヒの求める超能力者なのかと疑問に思う。これはハルヒが一番嫌う平凡と云うやつだろう?

「誰にも言わないでくださいね?貴方にだから言ったんですから…」

そんな有り触れた台詞を古泉が吐くなんて…何かの悪い冗談ではないだろうか?そう思わずにはいられない。
嘘だ嘘だと思っても目の前で楽しそうに話している古泉がいる事は真実で…。
嗚呼、駄目だ…。眩暈がする……。

眉間を押さえて俯くと、古泉が心配そうな顔をする。
俺は心の中で「俺なんかに構っている暇があるなら成田さんとやらに構っていればいいのに…」と思う。
嫉妬なんてかっこ悪い…。でもそれを口に出さないのは本当にそうされる事を恐れているからだろう。

「古泉…お前、成田さんに告白とかしないのか…?」

考えるより先に口が動いた。
こいつの事だ。告白したらほぼ100%うまく行くだろう。しかし涼宮ハルヒの監視役という立場上、そんな事にうつつを抜かしてもいられない筈…。
俺はただ、古泉がどう出るのかが気になった。
いや、不安だったと言った方がいいのだろう。

「言ってみたいと思った事は何度もありますよ。でも僕にはその権利がない」

古泉は小さく瞳を揺らしながらどこか遠くを見るように言った。
俺はただ訳もわからず悔しかった。
これは成田さんへの嫉妬だ。そう思うと格好悪くて仕方ない。
俺が男という時点で女の成田さんに勝てる訳がないとわかってる。でも、どうしても認められないんだ。

「もし成田さんに告白されたら付き合うのか?」

疑問が口を衝いて出る。
古泉は長い沈黙の後…

「……さぁ?…どうでしょう……?」

それだけ言うと俺に背を向けた。

「その時の感情に任せて付き合うかも知れませんね…。でも冷静に考えると付き合わない方がいいでしょうから…」

背を向けたまま、古泉は話す。
俺は何も出来ないことが堪らなく悔しかった。

身体が勝手に動く。俺は古泉に何も言わずに部室を出ていた。

「キ、キョン君??!」

扉の向こうから古泉の声が聞こえる。
俺はそれを無視して廊下を走った。


古泉が成田さんの事を話すのが堪らなく嫌だった。

階段を下りて、靴箱の前で立ち止まる。
振り向いて、古泉が追って来ていない事を確認すると安堵と落胆でどっと疲れが襲ってきた。

もし俺が成田さんだったら……古泉は追ってきただろうか…?
そんな事を考えてもどうにもならない事はわかっている。そう思って馬鹿な自分を嘲笑っても何もかわらない。
俺はこんなにも古泉が好きなのに、それを伝える事はこんなにも難しい。
ましてや両思いなんて有り得ない…。
背に体重を預けるようにして靴箱に寄りかかる。
息を整えていると昇降口から人影が現れた。

「あの…、随分息切らしてるみたいだけど大丈夫?」

その人は心配そうに俺を見詰めて、自分のハンカチで俺の額を拭ってくれる。これから帰る処なのか肩に鞄を下げている。待ち人でもいたのだろうか…。

「何かあったんですか?ただ事じゃないって感じで走ってきましたけど…。」
「別に……」

彼女の質問に俺は荒い息のまま答える。
少しすると大分落ち着いて、自分が何も持ってきていない事に気付く。
…荷物全部部室に忘れちまった……。
今から古泉のいる部室に荷物を取りに行くのも嫌だし、今日はこのまま帰って明日の朝取りに行けばいいかと考えていると、少し遠くの方からバタバタと足音が聞こえてきた。
…嫌な予感がする。

「…キョン君!わ、忘れ物で…す…っ」

そう言って俺の鞄を差出ながら走ってきた古泉は俺の前で立ち止まって膝に手をあてて下を向きながら息を整える。

「…あ、成田さん…こんにちは。」

古泉は軽く頭を下げて、いつもと変わらないように挨拶した。
俺は彼女を振り返る。

「古泉くん…今帰り?」

彼女は優しい笑みで古泉に問う。古泉は生返事を返しながら俺に鞄を手渡した。
俺は鞄を受け取り、黙って二人を見詰める。
…この人が…成田さん……?
言っちゃ悪いがその人は割りと普通の顔立ちで、特別不細工と言う訳でもないが、ハルヒ達ほど綺麗と言う訳でもなく…
古泉と並んでいると……少し劣っていると言うか…ぶっちゃけ似合わない。
これなら朝比奈さんに取られる方がまだ納得がいく。

「…どうか…しましたか…?」

古泉は覗き込むように俺の顔を見てきて、その距離が近いことに俺は動揺して古泉を押しのけた。

「…か、顔が近い……っ」

少し顔が火照っているのが自分でもわかる。
それを古泉に気付かれないように俯く。

「キョン君…耳が……」

そう言った古泉の指が俺の耳に掠った。その事に俺の身体は必要以上に反応してしまって、俺は堪らなく恥ずかしいくなる。

「っ!…もぅっ帰るからっ!」

そう言って走り出そうとすると今度は逃がさないとばかりに古泉が俺の腕を乱暴に掴んだ。

「…な…んだよ…ッ!」

古泉には成田さんって好きな人がいて、俺なんかは到底両思いにはなれない。
そんな事は最初からわかってる。だから…変な期待はしたくないんだ…。なのに…

「なんで離さないんだよッ!」
「離したくないからです!」

予想もしてなかった古泉の答えに俺は戸惑う。
そんなの絶対変な期待するに決まってるじゃないか。

「成田さんが見てるだろ…。離せ…」
「嫌です」
「なんでだよ…」
「嫌なものは嫌です」

古泉は離さないの一点張りで俺は困る。
振り払って逃げてもいい。でもこの状況はほんの少し幸せで、優越感に浸れる。そんなことを考えてる自分は浅ましい。

「お前俺のこと好きなのかよ…ッ!?」
「わかりません!」
「なんでだよっ!…好きじゃねぇだろ!お前は成田さんが好きなんだろ!」
「わかりません!でもあなたが成田さんを気にするのはどうしても嫌だ…ッ!」

一丁前に焼もちなんて焼いてるんならさっさと告白しちまえばいいのにな。そう思うと心はやけに冷たくなった。


俺が古泉に告白する3秒前…。



fin






…で?結局私は何がしたかったの…?
こんな物を人前に晒していいのかな?ネタも思いつかないのに書くものじゃないですね。小説って…
終わらない〜終わりが見えない〜と思いながらも無理やり完成させましたよorz


あきゅろす。
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