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短篇集
ナミダ顔にKissを(骸)




信じようとしない


信じたくなかったの







だって………


骸サンが死ぬワケないもん。









ウソ。絶対ウソだよ……












――――骸サン………








――――――






『……骸……サン…?』




ベッドの上で、小さく息する骸サンに私は喋りかけた。






「……名前」

『……は、い』



馬鹿、泣くなよ私





………でも、久しぶりに聞いた骸サンの声が
とても温かくて、安堵からか私の頬からは涙がこぼれていた。







『……むくろ……サン……』






1回涙がこぼれれば、止めようとするのは中々出来ない。





泣きたいのは………
骸サンなのに…………









「名前……。そんなに泣かないで下さい…」


ボロボロ溢れる私の涙。
自分の袖で涙を乱暴に拭った。


骸サン。



『…苦しくない…?骸サン……』


「いえ。そんなに辛くはないですよ……」


『…そう……ですか…』



辛くないワケないのに。
ムリしてるの、すごく分かるよ。


分かりたくないのに。
せめて分からなかったら、この涙も止められただろうに………





安心したいのに、私はどこかで最悪の状況を想像していた。


骸さんの、死を……









『……あ……ぁ……。ヒック……ぅう………』




私は心の中でそんなコトを想像すると、すでにいっぱいいっぱいの気持ちが溢れ出して……





「名前 泣かないで。僕は貴方を残して死んだりしませんよ」






骸サンは私の心を読んだのか、薄れた目で私の涙を拭いた。








『骸サン……。私、骸サン……を……信じています……。
骸サンは……死なないです……。』





「…当たり前ですよ。僕は愛する人を残したまま死にません。」








涙がこぼれ落ちる私の顔に、
骸サンはキスをした。








そしてゆっくりと、私の唇から骸サンの唇が離れていく。



刹那



私は見たくない光景を目にした。



私の前では、静かに目を閉じている
とても綺麗な顔をした骸サン










『………骸……骸サン……!!
骸サン!やだ…。イヤです骸サン!!
ウソ……骸サン死なないって………
言った………の……に……』











私は涙を枯れるくらいに流した。
その涙はドコに向かって何のために流れているのか……




私はもう一度、最後に骸サンにキスをすると
部屋を走って出ていった。








大丈夫





骸サンは死んでない。死んでないよ







私は、そう信じて………













理想という名のエフェクター



真実をごまかしてる








愛のイミ答えられない
確かにあるのに。





















それから幾年の年月がたった。



私達、犬と千種は慣れたのかその話に触れたくないのか
骸サンの話はしなかった。


骸サンは霧のように姿を消していた。


私が黒曜ランドに戻ったときにはいなくなっていた。




犬と千種には、骸サンが死んだのは言っていない



ただ姿をくらました。
とだけ言って…………
















『………骸サン……。いまドコに……』






私は鉛色の空を見上げながら、小さく呟いた。















カツン…………






後ろから聞こえた、小さな足音



私は後ろを振り向かず、声をかけた。




『…犬、千種……?』



「……骸です……。」






私は耳を疑った。


少々、笑い混じりなその声



私はまだ振り向かなかった。






『…………骸………サン……?』









呼んでほしい………


その声で、私の名前を………










『…骸サン……』






「名前」








私はその言葉と共に、後ろにいる愛しい愛しい人に向かって、走って向かった。












『骸サンッッ!!!!!』









骸サンだ。骸サンの匂いだ。
骸サンの手が、口が
その1つ1つの箇所が私の涙を倍増させる










私の頬はとめどない涙で溢れていた。







『骸サン、いままで………どちらに……?』




「すみません。心配をかけないと思っていたのですが……
逆に心配かけさせてしまったようですね。」




『私ずっと、ずっと待っていました……。
ずっと……ずっと逢いたかったです…!』




「分かっていますよ。僕も名前と同じくらい、貴方に逢いたかったです……」











私は涙だらけの顔で、骸サンの顔を見た。




骸サンは綺麗な顔で、優しく笑いながら
滑らかな手の平で私の頬に手をかけた。










『……骸……サン』




「名前」




『………ん……』









骸サンは私のナミダで濡れた唇にキスをした。















「骸さん!柿ピー!骸さんが……」




「犬…………今は行かない方がいい……」
















こうして、私達のいつもの毎日が始まる。












「犬。ご飯を食べるときはちゃんと箸を使って食べなさい。
千種、もっと食べないと体が持ちませんよ」




「へい骸さん!」



「はい、骸様……」















取り戻した日常



またいつ崩れるか分からないけど、
いまこの時を感じていたい。





例えまた、別れる日が来ようとも―――……

















-End.















アトガキ(えーっと、骸サンは姿くらましただけで死んでなかったと。
そしてなぜ死にそうになっていたかというと、まぁ敵にやられたトコの打ち所が悪かったんでしょうね。………きっと)


骸(頑張って納得させようと必死ですね)
 
 
 
 


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あきゅろす。
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