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A!?
回復能力と黒い影


モンスターが私達に近付いてくるのをただ見ているだけだった……が。

「このばかっ!」

「!?」

私の前にいきなり現れた影がその攻撃を剣に受けいい音が響いた。

(この声……この後ろ姿……)

「よっ!陽菜ちゃん」

「ちろる君……ソルト君!?」

目の前にいたのはさっき別れた二人だった。

「先輩よそ見してる場合ないっスよ!」

「あぁ」

「陽菜は後ろに下がってろ」

「え」

「はやく!」

「は、はい」

言われて邪魔なのに気付き、私は邪魔にならなそうな場所へ唯是君を抱え行く。移動したのをソルト君は確認すると、剣を強く握りモンスターへと走り飛んだ。


**


「ハァハァ……しぶとかった……」

「前倒したやつより強かったなぁ……」

モンスターが動かなくなり、ソルト君は刺さっていた剣を抜く。

「ってことは洞窟のモンスターも強くなってるってことか?」

「まぁ……RPG的に言うとレベルが上がってるってとこか」

「……こっちもレベル上げもとい戦闘慣れしといた方がいいってことか」

「……」

「陽菜ちゃん怪我ない?……ってあら」


ぎゅっと怪我をした唯是を抱き締める。


「唯是君が……私のせいで……」

「……」

「…………確か怪我を回復するアイテムあるはずだよなぁ」

「うん、まぁ……だけど」

「だけど?」

「……俺ら持ってないんだよなぁ」

「…………」

二人は無言で向き合う。その間にも唯是君は苦しそうだ。

(唯是君は私を庇って……なんで私はいつも……いつも)

――守られてばかりで。

(こんなの嫌なのに……嫌なのに……)

「!?え……」

「陽菜ちゃん!?」

ぎゅっと目を閉じ、念じると光が私を包み込む。それと、同時に頭に一瞬誰かが笑った顔を思い出した気がした。


「!?」

「……!?」

「ひよこ……自分……」

「唯是君!!」

目を開けると腕の中でぐったりしていた唯是君の怪我は綺麗になくなり、パチパチと瞬きして私を見上げていた。

「唯是君怪我治って……え、なんで」

目を閉じた間になにかあったのかとソルト君を見るとソルト君もわからなそうな顔をしている。

「?」

「……陽菜が治したのか」

「え」

「え?じゃねぇだろ。それしか」

「??」


(私が……?)

わからなくて自分の手のひらを見てると唯是君はぴょんと膝から降りる。

「ひよこが治したんや」

「え、私が……ですか」

「……珍しい……治療士だったんかひよこ」

「え?」

「凄いでひよこ!!」


唯是君はぴょんぴょんと私の周りを嬉しそうにまわる。

(私が……本当に……?)

本当に私が唯是君を回復させたのだろうかと疑う。実感がわかない。

(でも……)

もし、そうだとしたら私はソルト君達の役立たずじゃなくなるかもしれない。

「……まぁ、良かった良かった」

「だな。じゃあさっさとこの気味悪い場所から……!?」

「先輩どうかし……なっ……」

(気付きませんでした……)

こんな目の前にまたモンスターがいるなんて……

「っち。さっきの仲間かよ」

「あーもうさっきの戦闘でくたくただってのに」

「文句言うんじゃねぇよ!ほら、構えを……」

「わかってるっての!ほらよ!……!?」

「え……」

ソルト君が一撃を食らわすが全然効いている気配がない。ソルト君は驚いた顔をしたが、すぐ笑った。

「へっ。かたいってなら何度も斬ればいいって話だ!」

「だな……何度も……。……」

何度も何度もソルト君は斬りつけるが全然効いてない。そのうちソルト君達が疲れてきたらしく動きが鈍い。

(このままじゃ……)

「逃げるで自分ら!」

「わかってるつうの!……でもよ」

「あぁ」

「逃げれそうにないんだよ」

「!!」

気が付けばモンスターに囲まれていて私は固まる。

(いつのまにこんなに……)

「ははっ……これってゲームオーバーになったらリトライ出来るのかな」

「んなこと考えてる暇あったら策考えろっスよ!」

「……」

そう言って間にもジリジリとモンスターが近寄ってくる。あぁ、もう終わりかもしれない。そう思った瞬間……


「にゃんてな」


「!?」

声と黒い影が見えたと思った瞬間モンスターが次々となにか撃ち抜かれて倒れていく。


「!?なんだ新たな敵か?」

「姿見えないからわかんねぇっスよ!……なにが……!?」


気が付けばそこにいたモンスター全部が倒れていて、私達は立ち尽くす。

「どうなって?」

「…………絶体絶命な時に助けられたのか?」

「誰にっスか」

「俺だってわかんねぇよ。つかそいつが襲ってくるかもしんねぇだろ!気を抜くな」

「!!」

ちろる君にそう言われて、ソルト君は辺りをゆっくり見回す。私も立ち上がり、敵がいないか見渡してるとふぅっと唯是君が息を吐き言った。

「大丈夫や気配があらへん」

「気配がないって言っても!!」

「俺が大丈夫やっていうんやから信用せい」

「…………」

信用ならねぇよと小さくソルト君は呟くがちろる君はそうかと言うとナイフをしまった。

「……なんだったんだろうな」

「猫の気紛れやろ」

「はっ?」

意味がわかんないと唯是君をソルト君は見るが、唯是君は視線を無視して背を向ける。


「元いた道に戻るで」

「はっ?なんだよ意味わかんねぇことを」

「答えがわからないことを考えるのは時間の無駄ってことや」

「だ、だからって」

「えぇから行くで」

「おう」

「ちょ、先輩……」

歩き出した唯是君を追うちろる君にソルト君は不満そうに声を出す。

「なんなんだよ……」

「ソルト君……」

「……姿見えないやつに助けられたとか意味わかんねぇし!なんだよ!」

「……」

「本当に意味わかんねぇ!」

「あ……待ってください」

ソルト君もちろる君の後を歩き出したので慌てて追いかけた。

(確かにあの影は一体なんだったんだろう……それに……私……)

ソルト君の後ろを歩きながら唯是君を回復させた時を思い出す。

――あの笑顔は誰だったんだろう……?




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