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A!?
時計とピース

「……?」

「お嬢さんポケットに手を入れてみ」

「…はぁ………?」

わけがわからず、ついてるポケットに手をいれるとがちゃりと金属の音がして……

「え……?」

あるはずのない懐中時計を手に持ち、取り出して私は驚いてしまった。

(いつの間に懐中時計を……)

「時計を持つ持ち主はピースへと導いてくれる…って話や」

「……」

「おぉ!!」

「……へーすげぇじゃん……」

二人が私を持つ時計を覗き込む。

「………」

(これも失った記憶のせいで……)

「これでさ、まだ帰れる……陽菜?」

「……」

「おい、陽菜」

「!!…すみません…なんでしょうか」

「何ぼーっとしてるんだよ!その時計さっさと使って早く帰ろうぜ」

「え……」

「ピースを見つけるんだろ?ほらほら」

「あ…はい。」

(今考えもしょうがないよね…今はピースを見つけて、現実へと……)

「あの…どうやれば……」

「願えば…示してくれると思うで」

「…なんかそう言うと…ファンタジーくさい」

「大丈夫だソルト。今目の前にいるうさぎと話してる時点でめっちゃファンタジーだから」

「………」

目をそっと閉じ、願う。

――ピースある場所を示して…と


…。

……。


「?」

「なんかこう光るとかありそうなのに…ないのか……」

「…どう陽菜ちゃんなんかわかった?」

「……」

「陽菜ちゃん?」

「!すみません…その…何も…」

「………」

「すみません…すみません……」

明らかにソルト君が不機嫌そうな顔をしたので、謝るが彼は大きくため息を吐く。

「まぁ…そうすぐ簡単に見つかると思ってねぇけど……」

「う……」

「…つかさ…本当に…導くのも怪しいけど……」

「さっきまで信じてたくせにいきなり疑うんか」

「なんか出来そうな空気だったからだよ!できねぇし…嘘じゃねぇの…」

「調子悪い時もある」

「……………」

ソルト君は疑いの目で帽子屋さんをじとーと見つめるが、本人は普通に紅茶を啜ってる。

「まぁまぁ…ソル。そういう時もあるってことにしようぜ」

「先輩は信じるんスか?こんなこと…」

「だって信じるしかないじゃん」

「だけど……」

「…導くんだったらラッキーだし、導かれないんだったらまぁ残念程度にしとく。」

「でも胡散臭いこいつらを信じるとか……」

「いやー確かに胡散臭いけど…どうも……」

ちろる君は彼らを見てから、ひょいっとお菓子を一つまみして口に運びつつソルト君と会話をする。

「親近感あるし…俺は信じるよ」

「……そうっスか…俺は信用してないっすからね」

「別にえぇわそれで。借金返してくれれば」

「…せやな」

たれ耳の可愛らしい兎の三月うさぎが、紙を鞄から取り出しソルト君の方に向かう。

「時計も反応せえへんし何もすることなくて暇やろ…その間これしといたらどうや?」

「暇って……ん?」

ソルト君は紙を受け取り、黙り込む。私は何かと彼の後ろに回り覗きむ。

「…懸賞金一万アリス?」

「!!うわ…ってかお前ちかっ…!」

「すみません……」

紙に書いてあったことは洞窟に住む魔物退治のようだった。覗き込む程近くにいたので、彼に注意され離れる。

「借金の返済にやったらどうや?」

「どうやって……安くね……これ」

「自分達はまだこの世界に慣れてへん。それくらいが丁度いいと思うわ」

「あれだよソルト。お前まだレベル低いからだよRPG的に」

「あー成程………」

ソルト君は納得したように呟くが、まだ納得してない部分もあるみたいで。

「つか洞窟ってどこだよ」

「お前らが最初に入る洞窟や」

「はっ…わかんねぇよ……地図とか」

「借金増やしてもえぇん?」

「うっ…」

この鬼とかブツブツとソルト君は言っているのを見ていると、ちろる君がこちらに振り返る。

「陽菜ちゃんは大丈夫?」

「え!?」

「えって…陽菜ちゃんも一緒に行動することになるじゃん。また怖い怪物に自ら行くことになるってことだし…」

「あ……」

(考えてませんでした……)

自分から危ないところに行くことになるのを指摘されて、気付いた。

「あの…その…二人を足引っ張らない程度に頑張ります」

「そうじゃなくて…」

「確かに…怖いですけど……その……」


ソルト君の方をちらりと見る。

「守ってくれる…んですよね……」

「……!!あ、あぁ……」

ソルト君に向かって言うと、ソルト君も頷き言ってくれ私は笑顔になる。

「だったら大丈夫です…!怖いですけど頑張ります!」

「……まぁ…邪魔になるから後ろにいれよ。守ってやるから」

「はい…邪魔にならないように後ろにいますね」

「あぁ……」

彼はぷぃっと前を向いてしまい、なんか悪いことでも言っただろうかと思っていたらちろる君が肩をぽんっと叩く。

「陽菜ちゃん陽菜ちゃんあれソル、照れてるんだよ」

「え…」

「だって今まで女の子に頼られた事お前ないもんな」

「!!先輩は黙ってて下さい!」

「…そうなんですか……」

「……うっさい!ほら魔物?モンスターがいるって洞窟に行こうぜ!早めに終わらせといた方がいいだろ!」

「照れ隠し?お前のツンデレ誰も喜ばないぜ」

「先輩はマジ黙ってて下さい!ほら行くぞ!」

ソルト君は先にずんずんと進んで行き、私とちろる君に振り向く。

「何してるんスか!ほら!」

「はいはーい!!…しょうがないから陽菜ちゃん行こうぜ」

「は、はい……」

ちろる君に言われて私は、ソルト君の後を追った。



「あの女の子大丈夫なんかな……」

「心配なん?」

「ちょっと…心配や…」

「まぁ…大丈夫だと思うで…カンやけど」

そういって帽子屋は紅茶を啜った。



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