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A!?
帽子屋と借金

「記憶喪失…」

「だよなぁ…なんも思い出せないとか」

「ここに来た時の衝撃でか?制服でも着てれば学校くらいわかったのに」

「制服…」

彼らは確かに学校の制服みたいな服を着ている。しかし、私はひらひらしか赤いエプロンドレスを着ていてとても学校の制服には見えない。

「つかアンタの服なんつーかファンタジーだよなぁ…」

「俺らのお姫様…ヒロインって感じでいいんじゃね?」

「…ヒロインならもう少し可愛い方が良かったっスけどね」

「…すみません…」

ソルト君に言われ、確かに私なんかより違う可愛い女の子を助けたりしたかっただろうなぁと思い俯く。

「十分、陽菜ちゃんも可愛いけどな」

「…ありがとうございます」

「しかし、記憶喪失かぁ…一体どうすれば…ん?」

「先輩どうかし…。……」

後ろから足音がして振り向くとそこには、シルクハットに白い短いジャケットに思わず目を奪われるくらい、綺麗に整った人がそこにいた。

(綺麗な人だけど誰…?)

「新たにこの世界に来た客人よ…この世界にようこそ」

彼はお辞儀をし、顔を上げ私と目があい、微笑む。その微笑みはどこか懐かしくも感じた。

「この世界に来た客人だぁ?なんだアンタ」

「…」

「まぁまぁ…自己紹介の前に」

「…」

彼は帽子を脱ぎ、ソルト君は怪しんでるからか剣をまた握りいつでも行動出来るように構えている。


「お茶会でもしよか」

「は?」

「?…!?」

そう言って彼は帽子からなにか取りだし、いつのまに来たのかわからない垂れたうさぎ耳の子供がお茶会の準備をせっせとする。


「な、なにして…」

「見てわからへん?お茶会やお茶会の準備…」

「いや、それはわかるけど…。いきなり」

「準備出来たわ。さぁ、座って座って」

「あ、ども」

「せんぱいっ!」

チロル君は疑うことなく席に座り、出されたお菓子を食べようとしている。

「なに、いきなり現れた変なやつとなにしてるんスか」

「なんだソルも食いたいのか?ほらクッキー」

「別に食いたくないっスよ!大体先輩は…」

「禾本ソルト君」

「あっ?」

彼は紅茶を優雅に一口飲み、コトンっとティーカップを置いてから、ソルト君の名前を呼んだ。

「自分はお菓子くえへんよ。借金増やしたくないやろ?」

「はっ?なに言って…借金?そんなのアンタにした覚えが…」

「そんなことあらへんやろ。今自分握ってる剣みてみ。」

「剣?剣がどうかし……」

「?ソルト君……」

黙ったソルト君が気になり、私も覗きこむとそこには値札があり、見たことがない桁のゼロが沢山並んでいた。

「値札!?なんでこの剣に…はっ!?」

「それ売り物やで」

「売り物…!?何で売り物がそこらへんにあったんだよ!」

「商品棚に飾るように地面に刺して置いた」

「そんなとこに刺して置くなっ…!!」

可愛らしい兎耳をはやした子供に言われて、周りにちらほら剣が刺さっているのに気付いた。これらも商品なんだろう。

「いやーしかし…一番いい剣選ぶなんて自分英雄になれるんちゃう?」

「調子いいこと言ってるんじゃねぇ…俺はこんなこと知らねぇよ!返品だ返品!」

「使用済みを返品許可せえへんよ普通」

「う………」

彼は素直なのだろうか、剣と彼らを見てどうにかならないかと困っているが言葉が思いつかないらしく黙り込んでいる。

「まぁ…俺らも鬼やないで。いきなり全額払えなんて言わへんし」

「十分返品きかない高額商品買わせといて鬼だろ……」

「………」

ティーカップをかちゃとテーブルに置いて、彼は顔を上げる。

「分割でえぇし…金を稼ぎたいならばえぇ場所紹介するわ。ガッツリ稼げるで」

「えぇ場所って………」

「つかお前ら名前なんて言うんだ?」

「先輩まじマイペースっすね」

先程までクッキーやらを食べていた先輩が思い出したように話しかけ、あぁ…と帽子を被った彼は私とソルト君を見つめる。

「申し遅れたわ…俺の名前は帽子屋…武器&スキル販売しとる」

(スキル販売……?)

スキル販売とは何か気になったが、それを聞かずに彼が口を開いた。

「そして…この世界のゲームの説明係や」

「…………?」

この世界のゲームの説明係と言われて、私たちは固まる。この世界といわれてわかるがゲームとは……

「ゲーム……?」

「せや……ゲームや…ピースを集めるゲームのな」

「ピース……?」

「せや…ピース…」

すっと帽子屋が手をかざすと光のパズルみたいなピースが見えた。

「このピースを全て集めるとゲームが終わり、現実世界へと帰れる」

「!!」

「現実世界へと……帰れる……」

ソルト君は呟き、帽子屋をじーっと見つめる。帽子屋はその視線の方を見ることなくピースを見つめ続ける。

「逆に言うとピースを集めないと帰らないってことか……」

「そうなる」

「…先輩…どう思うっすか…」

「コイツが言ってることあってるかもなぁ……」

「え?」

ちろる君の方を見ると、彼は考えるポーズをしてソルト君の方へと見る。

「ここ夢の世界みたいじゃんか?俺一度寝たけど…覚めることなくてさ…痛みなどやってみたけど全く帰れる気配がなかったんだ」

「マジっすか……」

「あぁ……」

「…そんな……」

(全てのピースを集めることをしなければ帰れないなんて…)

「夢の世界みたいっていうか夢の世界なんやけどな……」

「…君は……」

「俺の名前は三月うさぎや!」

「三月うさぎさん……」

「おん」

三月うさぎさんはとてとてと可愛らしく歩き、つい目で追ってしまう。

「で、そのピースは全部でいくつあるんだ?」

「…せやな……」

「あぁ……それくらい教えてくれよ」

「知らへん」

「……は?」

「人によってちゃうという話もある」

「は?」

「つまりは…ピースのことはわかってへん…」

「はぁぁぁ…お前それでも…説明係かよ」

ソルト君は呆れながらいうが、帽子屋さんは気にせず紅茶をまたのむ。

「わかってるのは全てのピースが揃った時に道が開かれるってことだけや」

「なんだそれ」

ほぼわかってないじゃんとソルト君がぼやくが、帽子屋さんは気にすることなく紅茶を飲み続ける。

「…つかさ…もしかしなくてもピースの場所もわかってないんじゃねーの…はぁ…なんちゅー面倒な…」

「あぁ…それは多分わかるはずや」

「ゲームで最悪じゃ……は?」

「お嬢さん」

「?」

彼は私の方を見て、ポケットを指をさした。

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