A!?
剣と約束
「おぉ…つか空あおっ!」
小さな扉を二人してくぐるとその先は、青空と先程あった花畑とはまた違う色鮮やかな花畑…近くには森があり葉が穏やかに揺れている。
脱出を出来た喜びでか、彼は小踊りをしていたりするのを眺めているといきなり私に振り返った。
「なぁ」
「は、はいっ!」
「さっきは」
まさか話し掛けられるとは思ってなかったので驚いていると、彼はぽりぽり頭をかきながらぼそっとなにかいいかけていたのだが残念ながら聞こえることはなかった。
後ろから来た人の声によってかき消されたからだ。
「ソルー!」
「へっ?あ、先輩!」
(先輩?)
彼は声へと聞こえた方へと後ろを向くと――
「はっ!?な、な、ななななな」
彼は言葉にならないらしく口をパクパクとして、目を見開いている。
「なにやってんスかぁー!アンタはぁああああ!」
「へっ?ひゃ…」
いきなり彼は走り出し、私の隣から姿を消す。何事かと疑問に思ってると、薄い赤髪の人が後ろからやって来て指を指すから振り返ると…
「!?」
後ろに私が見たことある動物より大きく口を開いた怪物がこちらに向かって来ていた。
(な、なんですかあれ…?え?)
「ぼっーとしてんなよ!逃げろ馬鹿!」
「は、はい!」
前から聞こえた彼の声に気付き、私は走り出すと、後ろから足音がゆっくり聞こえてくる。振り返らないように前にいる、彼らを追いかけているが…
「ひゃ!」
石に躓き、転んでしまった。
「な!」
「あ…」
「いたた…!?」
転んでしまった分、遅かった怪物が目の前まで来てしまい今私に攻撃しようとしている。
「危ない!」
彼の声が遠くから聞こえた。
あぁ、私はここで終わるのか。でも…
――やっと死ねる…
そんなことを思い目をゆっくり閉じる…。
「ち、ちくしょう!」
「ソル?」
瞬間に聞こえた足音、近くできゅっと足音が止まり…金属の音がしてそれから…
「!?」
攻撃を受けるはずだったのでなにもなく、ゆっくり目を開くとそこにはさっきいた男の子が剣を持って立っていた。
目の前には怪物が攻撃を受けたからか傷跡があり、先ほどの金属の音はこれらしい。
きゅっと彼は地面を蹴り、攻撃を受け苦しがってる怪物へとめがけて走り剣を頭にぶっ刺す。
大きな怪物の悲鳴と共に怪物は倒れ、彼は息切れしながら振り返った。
「大丈夫か?」
「あ…」
「怪我ないよな?たくっ…なんであそこで…って、おい!?」
彼の後ろには怪物が倒れて今更ながら死ぬとこだったと実感すると涙が出てくる。
「な、泣くなよ!?モンスター倒したんだぜ?」
「だ、だって…」
「だってなんだよ…」
「だってだって…」
「だからだって…なんだよ」
「っひく…」
「……泣いてちゃわかんねーよ…」
「っ…だって…」
目の前にいる怪物をみて、思う。もしかしたらこの先またこんな怪物に襲われてまた怖い思いするかもしれない。
そう考えたら怖くなって涙が止まらなくなってきたのだ。
「…だから!」
「ひっ!」
「なにかまだ不安なら言えよ!苛々すんなアンタは!」
「っ…」
剣を地面に力強く刺し、怒鳴られビクッとおびえるが彼は機嫌悪いらしくぶつぶつ言い出した。
「最初会ったときもはっきりもの言わねぇーし。さっきだって逃げようと思えば逃げれるはずなのに全然動かないし…なんなんだよ…しかも人が助けて心配してやってんのに…これだから女は…」
「お前も苛々するわっ!」
「ぶっ!」
色素が薄い赤髪の人が彼の頭を叩き、彼は痛かったらしく倒れ混む。
「泣いてる女の子に叫ぶなんて最悪だぞ」
「いたっ…」
「どうした?なんかあったのか?」
「う…」
「ん?」
座り込んだ私に屈み優しく見られ、どうにか口に出そうとする。
「あ、あの…またこんな怪物が」
「ん」
「こんな怪物がまた…現れたらまた…怖い思いするかも…しれ…ないって思ったら…」
「怖くて…その…」
「…」
言ってからまた涙が溢れだし止まりそうにない。赤髪の彼は黙り混み、もう一人の彼は…
「んだよ…そんなことかよ」
「…ん、ソル?」
「!?」
ぐぃっと私の腕を掴むと立ち上がらせ彼の顔が目の前にあり、また怒られるのかと怖くて目をぎゅっと瞑る。
「だったら俺がまた守ってやるよ!」
――!?
その言葉は私の中に入り込むようで、涙も勝手に止まり彼を見つめた。
「だから泣くなよ…」
「…」
「泣いてるとうざっ…!?」
思わず彼の腕をぎゅっと掴むと、ぎょっとした目でこちらを見た。
「本当に…?」
「!?」
「本当に…守ってくれるの?」
「…」
見上げて聞くと彼は少し頬を赤くなる。
「あ、あぁ…」
「ありがとう…」
小さな声で答えた彼に私は、そう聞くと何故だか微笑むと更に真っ赤になる。
「?」
「べ、別に礼言われることしてねーよ…離せ…」
「すみません…」
彼に言われて腕を掴んだままなのを思いだしそっと離す。彼は頬を赤くしたままで。
「アンタ…名前は?」
「へ?」
「名前聞いてなかっただろ?俺は禾本ソルト…ソルトでいい」
「私は甘泉陽菜です…。陽菜でいいです…ソルト君」
「ん…わかった…陽菜な。陽菜」
「はい…」
「俺は柏谷ちろる…ちろるでいいぜ」
「は、はい…ちろる君」
「あ、なんかいい…」
「先輩なんかおっさん臭いっス」
「うるせーよ中学生日記やってるくせに」
「なにがっスか!」
二人は仲良さそうに話し込み私が眺めてると、思い出したようにちろる君は振り向く。
「で、陽菜ちゃんってどこの中学?見たことないけどもしかして同じ中学?」
「へ?」
「へ?じゃないだろ。さっきのモンスター見て驚いたってことは見たことないってのはここの住人じゃないみたいだし」
「住人?」
「あれ、じゃあやっぱり俺らと同じく違う世界から来たやつら?」
「違う世界から…」
そう言われれば、私は違う世界から来た…そう感じることは出来る。
「は、はい…違う世界から来ました」
「お!」
「ですが…どこの中学とか…わからないです」
「え?」
「名前と…どこからか来たくらいしか…すみません」
「あ、いや謝る必要ないし…ソル…これって…」
「ん。」
二人は顔あわせ頷き呟いた。
「記憶喪失…」
ため息を吐いた二人と一人に近付く人影が…。そして…
「君が出る出番がなく助けられたね」
「…」
「まぁ、これで時は動き出すみたいだよ」
「…」
「嫌そうな顔しないでよ。あーやだなぁクールぶってさ」
「…」
「お前には似合わないよ……白うさぎ」
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