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スクランブル・マンション04
ことこと、ことこと。

角切りにして砂糖をまぶしておいた無花果が入った鍋に、ざらざらと砂糖を加えた。
まぶすなんてものじゃない。
無花果には可哀想なくらい砂糖が積もって雪山で遭難状態。

ぎょっとするくらいの砂糖の量だが、変にけちけちするよりきちんと果物の半分の重さ、加えた方が美味しいのだとわかっていた。
愛しい人の口にはいるものだから、一番美味しいものを食べてもらいたい。

鍋を火にかけ、沸騰したらとろ火で底を焦がさないように混ぜ続ける。
水分が飛んでとろりとするまで、混ぜ続けるのは気の遠くなる作業だ。

だが政宗はこういう時間のかかる作業が好きだった。
なにもしないで小十郎の帰りを待つより、生産的だし何より帰ってくるまでの時間が楽しくなる。
明日はバゲットにつけて朝ごはん。
シフォンケーキに生クリームと共に添えるのもいいし、久しぶりにスコーンもいいかもしれない。
小十郎が高性能のオーブンレンジを買ってくれたおかげで料理の幅はお菓子にまで広がっていた。


ことこと。ことこと。


小十郎のことを考えながらレモン果汁を加え、さらに混ぜる。
最近ぐっと冷え込んだから火の側にいるのが心地よい。
一人きりで流れるのが遅い時間も、こうして待てば愛しいものに変わるのだと小十郎に会って知った。

火を止めて、スプーンに掬ったのを冷まして口に運ぶ。
まだ熱くて甘みを強く感じるけれど美味しい、大成功だ。
心の中で喜んでいると、まるで見ていたかのようにグッドタイミングなチャイムの音。

出迎えればスーツ姿の小十郎にぎゅっと抱き締められて肩に頬を寄せた。
そろそろ離れるかな、と思った両腕が今日はなかなか離れない。
そして次の瞬間、小十郎が髪に鼻を埋めて、


「政宗……今日は甘い匂いがする」


と優しい声で言った。


「無花果のジャム、作ったんだ」


そう言い終わるとキスをされて、舌を絡め取られて。


「大成功、みたいだな」


嬉しくて。
恥ずかしくて。
好きすぎて。

見つからなかった言葉のかわりに、キスを少し高いところの唇に、押し付けた。




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