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05






思いきり走り、漸くハッと我に返ったのはアカデミーの職員室の近くになってからだった。
忍びらしくなく、肩で息をしながら後ろを伺う。
どうやらカカシ上忍は追いかけて来てはいないらしい。

「・・・しまったぁ!」
そこで自分が今までカカシ上忍に対して失礼な態度しかとっていない事に気が付いた。

謝るつもりだった。
昨日の上忍に対するあるまじき行為を。
いくら里内の生活が長いからと言って、上下関係を軽んじていた訳ではないと言う事を、言い訳みたいになろうがそのまま逃げるのが嫌で覚悟まで決めていた筈なのに。

それなのに、自分が逃げてしまうなんて。

ガックリと肩を落としながら、それでも足は次の授業の準備の為に職員室に向かう。
職員室の扉に手をかけ、フとさっきの事を思い出す。


・・・あれ?まてよ?
ちょっとおかしくないか?
・・・咄嗟に俺が逃げちまったけど、その理由は・・・


――"俺の恋人になって?――



「・・・ああっ!?」
開けた途端に入口で俺が叫んだものだから、中にいた同僚達や何気に来ていた仲間の視線が一斉に此方に向いた。
慌てて口を抑える。

「何だぁ?どうした?イルカ?」

入口近くに机がある同僚が驚いた顔でたずねて来た。

「えっ!?・・・あ、いやっ、なんでもないっ!すまん、驚かせてっ」

「・・・なら、いいんだけどよ。まぁた、ドジしたんじゃねぇのかと思ったぜ。」

つい一週間前に、アカデミーでの教え子が授業中に怪我をして病院に連れて行った事があった、その時に使っていた閃光弾を土に埋めっぱなしにしてしまい、漸く思い出したのは自分がアカデミーに戻って来てさて帰ろうかという時だった。
アカデミーでの授業に使うのだから、威力は実戦の5分の1程もない玩具の様な物だ、だからといって子供達が勝手にいじって怪我をしないという保証はない。使わなかったら、また拾い集めて管理しておかなくてはならなかった。
あと少しでアカデミーも閉めるという時に思い出し、その時にいた同僚にも手伝って貰い、ギリギリ閉校前に取り出せた。

その時の同僚の一人が、今からかいの言葉をかけた彼だった。

「ち、違うよっ!」

「あ、そうなの?・・・まぁ、また、そん時は手伝ってやるぜ」
「・・・ぐっ、だ、大丈夫だよ!・・・てか、またただ酒飲む気だろ!?」

あの後、詫びも込めて手伝ってくれた同僚にラーメンでも奢るつもりが、いつの間にか飲み会状態になっていて、結局先に奢る発言した俺が全額支払った。

あははと笑う同僚を軽く小突き、拗ねた顔で自分の机に向かう。
他の同僚達は俺達が話をしている間にまた己の仕事へと戻っていた。

自分の机に座り、大きく深呼吸をする。



大丈夫。今普通に会話出来ていた筈だ。


同僚と会話をしていても、気持ちはさっきの事で心臓が早鐘の様に鳴っている。


・・・そ、そうだよ!
さっき、カカシ上忍は俺に何て言った?

ストーカーまがいな行動なんてこの際どうでも良い。
問題が違う所になってしまった!


・・・好き?
・・・カカシ上忍が俺を?
・・・だって、俺、こんな平凡だし、なによりカカシ上忍と同じ男だ。

・・・それなのに?


――"好きです。付き合って下さい。"――



「・・・・・・―っっ!?」

一気に顔が熱くなる。
恥ずかしくて周りの皆から顔を隠す様に下を向き頭を抑えた。


・・・どうしようっっ!?
あの、はたけカカシが俺の事を好きと言ったなんて!

はっきり言って、俺と違い彼は里が誇る忍びだ。
後々は優秀な子孫を残していかなくてはならない筈。
いや、絶対そうだ!
・・・それなのに、はたけカカシが男に好意を持っているなんて事実がバレたら!
俺はたいした事にはならないが、彼は大きな汚点が付いてしまう。
後々まで語り継がれていくであろう彼の素晴らしい功績に水をさすような事になってしまったら・・・。


ハッと頭を上げた。

「・・・待てよ?これは誰かとの賭けとか、バツゲームとか・・・」

それはそれで、賭けの対象にされたという事で気分は良くないが、ゲームが終わったら終わるとそっちの方がまだマシの様な気がする。


・・・はたして、彼の真意はどうなのか?

聞いて確かめたい。
・・・でも、聞くのが怖い。



朝せっかく決めた覚悟はすっかりなくなっていて、残ったのは昨日から続いているため息だけとなった。













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