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君から始まる
「帰ろうよ」
哀しげな声でパンサーが言った。
無視してバットを振る。あえて行ったのはバッティングセンターで。アメフトだけがスポーツじゃねぇ。

「ねえ」
シカト。
「…怒ってんの?」
前からずっとな。
「……」
添え付けのベンチの上で膝を抱えて俺を見ている。俺は背中しか見せない。バッティングマシーンだけを見ていた。

前払いした分だけの球が出てくる。バットを振るなんて久々だったけれど、打球は悪くなかった。マシーンが、止まる。
「帰ろうよ」
まだ膝を抱えてパンサーが言う。
「やれよ」
バットを差し出して言う。
「帰ろうよ」
「家にか」
「ホーマー!」
あ、こいつにしてはだいぶ苛立ってるほうかも。
「…じゃあ、球拾いしにか?」
「…」
ああこれが傷口に塩を塗り込むって言うのかねと、意地の悪い心の中で思った。
「…帰ろうよ」
小さな小さな声で。まだ言うか。この頑固「ホーマーがいないと始まらないよ」
「…はぁ?」
「ホーマーのコールがないと」


見上げる目、静かに澄んでいた。



「帰ろう。きっとみんな待ってる」
パンサーは足を伸ばして立ち上がった。
負けた。
畜生知ってたよ俺ごときが敵う相手じゃないって。
バットを置いたら嬉しそうに笑った。
「ああ、あと」
出口に歩き出しながら言う。
「ありがとな、怒ってくれて」



やっぱり、敵わない。




END
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パンサは周囲に愛されているけど相当愛してもいるんだと思います。



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