2 しん、と静まる教室。 途端沸き上がる黄色い声に思わず耳を塞ぐ。 「かっ、可愛すぎるよれーちゃんっ!!!」 『ぅ、わ。』 勢い良く抱きついて来た月を受け止め、頭を軽く撫でる。 媛乃を見ると、何かをぶつぶつ呟いていた。 ……近づきたくないなぁ、もう。 不意に此方を向いたかと思えばずずいと迫ってきた。 『な、なに…?』 「明日、期待してるわ。」 『へ?』 「クラス優勝したら商品があるらしいから。頑張りましょう、零。」 「僕も頑張る!」 意気込むクラス全体にまたもや口許がひくつく。 明日なんか来なければいいと思ってしまった。 「因みにメイドの言葉も勉強してもらうから覚悟してね?」 笑顔でそう言う媛乃の目は本気だった。 ……なんでよりによってメイド喫茶…。泣きたい…。 迎えた次の日の朝。 メイド服を渡された瞬間に頭痛がした。 媛乃を前にして、今や非力になってしまった私に逃げる術はなく、仕方なしに手作りの更衣室に入る。 『はぁ……。』 思わず吐いてしまった溜息。 昨夜みっちりとメイドのなんたるかを叩き込まれたから寝不足だ。 あー、出たくないなぁ。 外で待ってるであろう媛乃に月、それからクラスメイトを思うとすごく疲れる。 *前次# |