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「れーちゃん!早く早く!」
『ちょ、月…、もう少しゆっくり…、』
さっさと進んで行ってしまう月を見失いそうになる。
学園の生徒+一般人も今日は来ている為半端じゃない人の数だ。
しかも月が向かおうとしてる所が特に。
歩けない程に人、人。
「れーちゃーん!」
そして月が大きな声で呼ぶからすごく目立つ。加えてメイド服だし余計に。
ぜぇはぁ息をしながら着いたのはなんと、
『ほすと、くらぶ…?』
「ねーっ?面白そうじゃない?ほすとくらぶ!」
『何するところ?』
ほすとくらぶ…、聞いた事がない言葉。
中を覗いてみると薄暗い。
『な、並ぶの?』
「まっさかー!」
長蛇の列を見てげんなりとしてしまうが、月の言葉で少し安堵した。
でも並ばないとしたらどうやって入るのだろうか。
月の後を着いて行くと、なんと教室の後ろのドアから中に入っていく。
其処には立ち入り禁止と書いてあるにも関わらず。
「コノー!遊びに来たよ〜っ。」
1人パイプ椅子に座っていたのは生徒会書記、如月火之魅だ。
呆然と此方を見ていた如月は、はっとしたように歩み寄る。
「月…?」
「えへへー、分かんなかった?」
「…女の子に見える。」
得意気な月は誰がどう見ても女の子になっている。
やったのは媛乃だ。
完全に2人の世界になっていたからそーっと休憩室から薄暗い店内に移動する。
入った瞬間絶句した。
なんていうか、ものすっごいきらきら。
赤い革のソファーが数個とテーブルがセットになるように配置され、人が賑わっていた。
お客さんは女性しかいないみたい。
そして接客は男子生徒のみ。
たまたま?と首を傾げたが、飲み物を運んでいるのは女子生徒しかいないから、勘違いではない様だ。
ふ、と端にある…、だけど凄く存在感がある部屋が気になった。
黒い硝子張りの部屋は中が見えない。
近づこうと歩を進めると、肩に手が置かれた。
「メイドさん。何してるのかな?…って、零?」
『え…?ます、たー?』
振り返ると其処には何時もと違うマスターが居た。
髪は普段通りなのだけど、白いスーツを纏っていて少し大人びてみえる。
首を傾げたと思ったらいきなり抱きつかれてしまった。
「零、可愛い。俺だけのメイドになって?」
『ま、マスター…、ちょ、離れて。』
視線が集まる。
特に女の人の視線が痛い。
どういうお店かいまいち良く分からないけど、マスターはどうやら人気みたい。
数分経ってからやっと離してもらえ、何処かに行ってしまったマスター。
月の所に戻ろうと思ったけど、やっぱり黒い部屋が気になったから覗いてみることにした。
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