5 「れーちゃん!早く早く!」 『ちょ、月…、もう少しゆっくり…、』 さっさと進んで行ってしまう月を見失いそうになる。 学園の生徒+一般人も今日は来ている為半端じゃない人の数だ。 しかも月が向かおうとしてる所が特に。 歩けない程に人、人。 「れーちゃーん!」 そして月が大きな声で呼ぶからすごく目立つ。加えてメイド服だし余計に。 ぜぇはぁ息をしながら着いたのはなんと、 『ほすと、くらぶ…?』 「ねーっ?面白そうじゃない?ほすとくらぶ!」 『何するところ?』 ほすとくらぶ…、聞いた事がない言葉。 中を覗いてみると薄暗い。 『な、並ぶの?』 「まっさかー!」 長蛇の列を見てげんなりとしてしまうが、月の言葉で少し安堵した。 でも並ばないとしたらどうやって入るのだろうか。 月の後を着いて行くと、なんと教室の後ろのドアから中に入っていく。 其処には立ち入り禁止と書いてあるにも関わらず。 「コノー!遊びに来たよ〜っ。」 1人パイプ椅子に座っていたのは生徒会書記、如月火之魅だ。 呆然と此方を見ていた如月は、はっとしたように歩み寄る。 「月…?」 「えへへー、分かんなかった?」 「…女の子に見える。」 得意気な月は誰がどう見ても女の子になっている。 やったのは媛乃だ。 完全に2人の世界になっていたからそーっと休憩室から薄暗い店内に移動する。 入った瞬間絶句した。 なんていうか、ものすっごいきらきら。 赤い革のソファーが数個とテーブルがセットになるように配置され、人が賑わっていた。 お客さんは女性しかいないみたい。 そして接客は男子生徒のみ。 たまたま?と首を傾げたが、飲み物を運んでいるのは女子生徒しかいないから、勘違いではない様だ。 ふ、と端にある…、だけど凄く存在感がある部屋が気になった。 黒い硝子張りの部屋は中が見えない。 近づこうと歩を進めると、肩に手が置かれた。 「メイドさん。何してるのかな?…って、零?」 『え…?ます、たー?』 振り返ると其処には何時もと違うマスターが居た。 髪は普段通りなのだけど、白いスーツを纏っていて少し大人びてみえる。 首を傾げたと思ったらいきなり抱きつかれてしまった。 「零、可愛い。俺だけのメイドになって?」 『ま、マスター…、ちょ、離れて。』 視線が集まる。 特に女の人の視線が痛い。 どういうお店かいまいち良く分からないけど、マスターはどうやら人気みたい。 数分経ってからやっと離してもらえ、何処かに行ってしまったマスター。 月の所に戻ろうと思ったけど、やっぱり黒い部屋が気になったから覗いてみることにした。 *前次# |