[携帯モード] [URL送信]




「あ、いやその…っ、」



あんなに意気込んだくせにいざ本人を目の前にすると、声が震える。

それを訝る様に見つめてくる瞳に慌てる。



「ぼっぼ僕のことっ、覚えていますか…!」



目線に堪えることが出来ず、半ば投げ遣りに、悲願するように問いかけた。

結果は、僕にとって残酷なものだった。



『…知らない。』



綺麗だと思った瞳に僕は映っていなくて、どうしようもなく泣きたくなった。





















「、っく…、ひっ、く…っ、」
「よしよーし。大丈夫だからね〜。」



ひっきりなしに吃逆が出る。
頭を撫でる手がなんとも心地良いから尚更だ。

名前も知らない相手に安心してどうする。



「ゔぅ…、」

「はーい、鼻かんでー。」



ティッシュを鼻に押しつけられた。

やっと泣き止んだ、と笑う目の前の男は…くそっ、イケてるメンズだ。



「…というか今更だけど、君名前は…?」

「ん?…あぁ、名前か。その内分かるよ。」

「え、ちょっと!」



腕を引っ張られ、無理矢理立たされた。

ぐいぐい引っ張られながら、その内って何時だよ!と心の中で叫んだ。



















「彼に見覚えないんだ?」

『……聞いてたの、マスター。』

「聞こえたんだよ、零。」



マスターがにこりと微笑む。

嘘だ。絶対態とだったくせに…。



「んで?どーなの?」

『知らない。』

「へぇ、そう。じゃあ早く帰ろう。」



差し出された右手。
その手を躊躇なく取った。







*前次#

4/17ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!