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曼珠沙華


「……あ」

「え?」


忍びの里の近くにある街、ルーカス。

人々が大勢行き交う中で、二葉は立ち止まった。

声を発したとされる少年は、二葉を見るなり驚きと喜びの表情をしてみせる。


「二葉!二葉だよな!?」

「え、ええ?」

「なんだよ忘れたのか?よく森で遊んでただろ?オレだよ、サトリ!」

「あ…ああああ!」


二葉が大声を出すと、周りの人が何だ何だと振り返る。

それを誤魔化すように俯いた後、二葉はパッと笑顔を作った。


「サトリ、久し振り!」

「元気そうだな二葉!ちっとも変わってねえ」

「そう?…そういうサトリは変わったよね、なんか大人びたって言うか…」

「ま、オレのイケメン度が更に上がったってやつだな」

「…中身はまんまだね、残念な所」

「なんだよ、泣き虫二葉ちゃん」

「もう泣き虫じゃないよ!!」

「本当かあ?いーっつもオレと会ってたときびーびー泣いてたくせに」

「む…そーいうサトリだって、女の子に相手にされない時はいじけてたじゃないか」

「ところがどっこい、今じゃモテモテハーレムなんだなあ、これが」

「え、なにその天変地異!どうしちゃったの!?有り得ない!」

「こら二葉、テメエ失礼だぞ」

「だって…え、有り得ない」

「有り得るんだなあそれが」

「サトリの勘違いとか自意識過剰とかじゃなく?夢の話なら笑ってあげるよ?」

「ちっげえよ!ったく、お前会わない間に純粋さ無くしたな」

「サトリよりは純粋である自信あるよ」

「だまらっしゃい」


そこまで言うと、どちらともなく笑い合う。

ひとしきり笑った後、サトリは近くのベンチに座った。

つられるように二葉も座り、二人で空を見上げる。


「懐かしいな」

「うん」

「最後に会ったのいつだっけ?」

「えと…六年前、かな」

「もうそんなに経つのかあ、オレが里出てから」

「……うん」

「オレの欺名、覚えてるか?」


不意に聞かれた問い掛けに、二葉は目を細めながら答える。


「葉、でしょ」

「お、なんだちゃんと覚えてたんだな」

「サトリじゃないもん、当たり前でしょ」

「んだよ、オレが物覚え悪いみたいじゃねえか」

「事実じゃないか」

「…っとに、可愛げのない子に育ちやがって」

「そう?」

「そうそ。昔は可愛かったのになあ」

「可愛くなくて良いよ別に」

「そういや、あいつらは元気か?」

「あ、うん。最近秋葉さんは任務で居ないから、あんまり顔見ないけどね」

「姫ちゃんと和は相変わらずか」

「姫葉さんは昔より丈夫になったよ。和葉ちゃんは相変わらずやりたい放題」

「うわ、目に浮かぶ。そういや二葉、まだ和に言ってねえの?」

「? なにを?」

「まだなら良いわ。…にしても懐かしいなー」


サトリがもう一度空を見上げた。

周りは行き交う人々、話し声。


「サトリ」

「ん?」

「里に、帰りたくなった?」


二葉に問われ、サトリは空から二葉に視線を戻す。

少し、沈黙が続いた。


「…ならないかな」

「…サトリ」

「オレさ、今旅してるんだよね」

「旅?」

「そう。旅。昨日の夜にたまたまこの街に着いて、ちょっと里の人間が居ないかなあとか捜してた」

「…え、じゃサトリ、此処にいつまでも滞在しないの?」

「しないしない。明日の早朝に旅立つよ」

「…そっか…」

「二葉に逢えて良かった」

「…サトリ、なんか気持ち悪いよ」

「前言撤回、逢わない方が綺麗な思い出になってたわ」

「失礼だなあ」

「どっちが」










曼珠沙華








「あ、仲間が呼んでる」

「…気をつけてね。じゃ、また」

「…おう、またな二葉!」












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