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ナイトシェード


灰と化した村に、一人の少年が立っていた。

ただ何をするわけでもなく、ジッと村が崩れていく様を見ている。


「…これが報いだ。龍神を裏切った人間が悪い」


人を形どった灰が、音もなく崩れ去る。

少しだけ顔をしかめながら、ゆっくり村を離れた。


「…レノリスですか?」

「!!」


不意に突然、後ろから声をかけられた。

驚いて振り向くと、懐かしい顔。


「…エリウ…」

「ああ、やっぱりレノリスでしたか。お久しぶりですね」


優雅にお辞儀をするエリウに、レノリスは顔を逸らす。

昔から、エリウと居るのは苦手だった。

自分とは違って、清らかだから。

この場が廃虚となったにも関わらず、エリウの周りは何故か美しく見えた。

空気が浄化されているとでも言うのか、とても澄んでいる。

自分より遥かに整った顔立ち、優雅な仕草、綺麗な心。

一目見ただけで、そこらの人間は心を奪われるだろう。

いつしか、聖母と呼ばれていた。


「…どうかしました?」

「…相変わらず世界が違う気がした」

「何言ってるんですか、同じ仲間でしょう?」

「…俺なんかよりよっぽど神様らしいよ」

「レノリスは限り無く人間に近いですからね」

「…うるせえな」

「良いじゃないですか、より人間の気持ちが近くにあるなんて羨ましいですよ」

「じゃお前も転生すれば」

「無理言わないでください。私とソプラは、貴方たちと違って実体が存在するんですよ?」

「離れたら消滅するんだもんな」

「分かってるなら、変なこと言わないでください」


クスクス笑うエリウに、レノリスはとうとう背を向けた。


「怒りました?すみません」

「…、何しにこんな所に来たんだよ」

「ああ、この村を治しに来ました」

「は?」

「灰になってしまったでしょう?コレでは生き物が住めないし、徐々にこの世界が消えてしまう」

「当たり前だろ。それに無くなって当然」

「…レノリス、貴方まだそんな」

「うるせえな、説教なんか聞きたくねえよ」


ギロッと睨み付けるレノリスに、エリウは困った表情を浮かべる。

レノリスはそのまま歩き出し、どこかへ行ってしまった。


「…レノリスは、余程人間が嫌いなんですね」

「違うと思うよ」

「! オシリス…聞いていたんですか」

「時間の神はニンゲンをそこまで嫌ってなんかないよ」

「…では、やはりあの事が原因ですか」

「そうだろうね、余程大事だったみたいだし?」


けらけらと笑うオシリスは、エリウのそばにしゃがみ込む。


「エリウの近くは落ち着く」

「そういう風に創られましたから…それより」

「ん?」

「…本当に、レノリスに言わなくて良いんですか?」

「良いんだよ。言ったら邪魔される。無意味でしょ」

「レノリスを説得すれば…」

「無理だよ。ボクは嫌われてるしエリウも避けられる。ソプラじゃうまく伝わらない」

「…貴方だけが、悪い訳じゃないのに」

「気にしなくて良いよ。ボクは時間の神が無事ならそれで構わない」

「…自らを犠牲にしてまで?」

「うん。ボクはエリウたち神が無事なら、それで良い。それにほら、ボクは死なないし?」

「…それは、成功しなければ」

「成功させるためには、時間の神は邪魔。だから良い?あくまでもボクらは、時間の神の敵を演じるんだ」
















ナイトシェード










自己犠牲なんて綺麗事


ボク大嫌いだったよ










あきゅろす。
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