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ブプレウルム


「姫葉、何度」


とある部屋の一室に、向かい合って座る姫葉と秋葉。

姫葉の服装は、いつになく軽装でTシャツ一枚。

ピピッと機械音が鳴り、姫葉は脇から体温計を取り出した。

体温計には、平熱よりも少し高い、37.0度と記されている。


「……」


秋葉は顔をしかめた後、首から下げていた聴診器を耳に当てる。


「手、入れるから」

「あ、う、うん」


服の下から手を忍ばせて、聴診器を胸にあてがう。

冷たい聴診器と、秋葉の手に思わず体を揺らす。

真っ赤になる顔を隠そうと、姫葉は俯いた。


「…後ろ」

「あ、はい」


くるりと背を向ける。背中にあてられた聴診器は、さほど冷たくは感じなかった。


「終わり…手、出して」

「はい」


秋葉は手首を掴み、時計と睨みっこしながら脈拍を数える。

一分ほどそうした後、秋葉はまた顔をしかめた。


「…熱、上がる」

「ありゃ…」

「呼吸にも少し雑音あったし、このままだと今晩喘息起こす」

「…そっか」

「今晩は薬飲むこと、それと今から30分はこれ吸って」

「…はあい」


白くあがった煙を吸い込みながら、チラリと秋葉を見る。

聴診器を外し、薬の入った引き出しを漁りながら何か考えている様子。


姫葉は幼い頃から体が弱く、よく春山家――要するに、秋葉の家にお世話になっている。

春山家は医療の知識に長けていて、里一番の医療忍者。

秋葉はその技術や知識をすっかり身に付け、今や姫葉の専属医師となっている。

と言うより、秋葉が勝手に姫葉の専属になりたいと我が儘を言ったからなのだが。


「秋葉くん」

「……」


何も言わず、こちらを振り返り姫葉の目をじっと見つめる。


「帰って来たばっかりなのに、ゴメンね」


秋葉は黙ったまま、姫葉を見続ける。

秋葉は3日間任務で里を離れ、先ほど帰って来たばかりだった。

そのまま姫葉の定期検診を行うからと、姫葉を医務室に連れて今に至る。

そのため、秋葉の身にまとう服はいつもと違った雰囲気で、寝ていないのか目の下には隈が出来ていた。

疲れているのだろうと、見れば直ぐ分かる様子の秋葉に、申し訳無さでいっぱいになる。


「…明日でも良かったのに」

「よくない」

「でも」

「よくない。診なきゃ今晩酷かった」

「それは…そうだけど」

「…、俺が帰って来るといつも体調悪い」

「そう、だった?」

「窓開けて寝てないだろうな?」


じっと見られ、姫葉はぎくりとしたあとに顔を真っ赤にする。

どうやら図星らしい。


「……」

「…あの、あのね、ゴメンなさい」

「夜は冷えるから閉めろって言ってるだろ」

「…うん」

「なんで開けてる、暑いのか?」

「…え、あの…違うの…」

「……」


ぐわーっと顔を真っ赤にして、煙を吸うのを忘れ俯く。

それから小さな声で呟いた。


「あの、あのね、…い、いつ帰って来るかなあって、まだかなあって、待って…たの」

「…!」


負けじと顔を真っ赤にする秋葉。

幸い、姫葉は俯いているから顔は見られていない。

秋葉は姫葉から顔を逸らし、溜め息をついた。


「…帰る日は、教えてるだろ」

「そ、そうなんだけど…えと、心配っていうか…あの……不安で」

「不安?」

「…秋葉くんが、側に居ないと、落ち着かないっていうか…寂しい…のかな、うん」

「……」

「ご、ゴメンね変なこと言って!熱上がって来てるのかな?あはは…」


姫葉が笑いながら顔を上げると、すぐそこには、秋葉の顔。














ブプレウルム








「……!?え、あ!え!?」

「…姫葉が悪い」







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