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レンギョウ


いつも格好悪いだとか

いつも情けないだとか

いつも男らしくないだとか


俗に言う、"ヘタレ"なあの人。


女の子みたいな顔

泣き虫だった性格

周りの男子よりも細い身体。

女装をさせても違和感のない、少し高めの声。


そんなんだから、小さい頃はよくいじめられていたあの人。

でもいつだったか、そんな人を

目で追いかけている私が居た。









窓の外を見た。

外には男子が楽しそうに術を掛け合ったり、走り回っている。

その中の一人を、少女――鈴葉はジッと見つめていた。


「……」


その人はいつも、髪の長い女の子や先輩達と過ごしていた。

話したことはない。けれど、噂は沢山聞こえてきた。

それが、良い噂ではなかったのは確か。

しかしながら、いつしかそんな噂は薄れ、今ではもう誰も噂をしなくなった。

そんな噂で知った、彼。


「…あ」


ジッと見続けて居たせいか、彼が此方に気付いたらしい。

ふと目が合った。

どうしたら良いか分からず、取り敢えず会釈をする。

彼は、にっこり笑って手を振った。


「(う…素敵笑顔)」


恥ずかしくなり、誤魔化すように窓から離れた。

何故だかにやける口元。


「(あ、でも変な奴だと思われなかったかな)」


そう思ったが、直ぐに考え直した。

別に、変な奴と思われても構わない。

今更、そんな事を気にはしたって仕方無いから。


「(私と話してると、あの人はまたイジメられちゃうけど)」


そう思いながら、もう一度窓の外を見る。

すでに彼は居なかった。


「…あー…残念」


でも、目が合った。笑顔を向けられた。

それだけで、充分。


「…よし、そろそろいこうかな」

フッと後ろを振り返る。

人が来る気配がした。


「(…誰だろう?)」


不思議に思って入り口を見つめていると、そこに現れたのは、長い髪をした女の子と、
先ほど見つめていた彼。


「!」


慌てて隠れようとしたが、足が動かない。

彼は此方を見ていた。


「なによ、誰もいないじゃない」


女の子が口を開いた。

その言葉に、彼は苦笑しながら言う。


「…みたいだね。ゴメン、気のせいだった」

「ほら見なさい!大体、旧校舎に人が居る方がおかしいのよ」

「和葉ー、誰か居たー?」


別の女の子の声がした。


「居ないわよ、気のせいだったみたい」

「…よ、良かった…!」

「あーあ、無駄足!戻るわよ」

「あ、先行ってていいよ。ちょっとこの学校見て回りたいから」

「はあ?」

「や、やめなよ…何かでたら…」

「大丈夫ですよ」


彼は、こっちを見て笑顔を向ける。


「(…素敵笑顔再び…)」

「…行こう」

「えっ秋葉くん!?」

「あっちょっと待ちなさいよ!!」


嵐が過ぎ去ったかのような静けさ。

気配が完全に消えた後、彼は口を開いた。


「…初めまして」

「あっはっ初めましてっ」

「僕に、何かご用でした?」

「えっ」

「前から、見てましたよね?」

「! 気付いて、たんですか」

「はい」

「……」


気付かれていた恥ずかしさと、会話しているという喜び。


「…あ、あの」

「はい」

「…今日、で最後なんで…」

「…あ、そうなんですか…」

「…あの…ですね」

「はい」

「……す、き、でした」

「え?」

「や、あの、恋愛感情とかじゃないんですけど!…なんて言うか…好かれやすいですよ」

「…あ、あー…」

「私が言うのもなんですけど…気をつけてください。あんまり、こうやって会話とかしない方が…」

「…有難う御座います」

「…私、最後に貴方と話せて良かったです」

「……友達に、なりませんか?」

「…え?」

「ね。なりましょうよ」

「え…あ…私なんかで良いんですか…?」

「はい。…友達を作れなかった、だから成仏出来なかったんでしょう?」

「!」

「ごめんなさい、ちょっと調べちゃいました」

「あ…そうでしたか」

「…ね。友達に、なりましょう?」







レンギョウ








「旧校舎の大火災、生徒一人死亡…って、何調べてるのあんた」

「んー…これで死んだのってどういう人なのかなあと…載ってないんだよね」

「鈴葉さんですよ」

「うお!椿!」

「彼女、親しい者がいなくて…随分影も薄い方だったらしいですよ。火災から一年経ってからようやく名前が分かったんです」

「え一年!?親は気付かなかったわけ!?」

「ご両親は、すでに他界されていた後らしいので」

「……なんかむごいわね」

「友達、居ないのか…」

「二葉?」

「ううん、何でもない」






あきゅろす。
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