絵本のような童話集(SS) 飛べない小鳥 空を仰ぐ。 地べたをよちよち、小鳥は空を仰ぐ。 小鳥はあの森へは入れない。 飛べなくなった小鳥は、もうあの森では生きていけない。 あの森の素敵なおばあさん樹にとまって、だいすきなお歌を歌えない。 高い気にとまることも出来ない。 あの森には、天敵が多すぎる。 ヘビやクマ、大きいトリ。 雨に打たれ、食べるものもなく、小鳥は弱りつつも、ニンゲンという生き物が棲んでいるナワバリへとたどり着いた。 森には居なかった、ネコが居た。 初めて出会うそのネコに、あなたはだあれ、と小鳥は話しかける。 ネコは答えない。 代わりに、ネコはヘビやクマ、大きいトリと同じように、小鳥を襲った。 小鳥は跳ねて避け、食べられずに済んだ。 けれども、羽を少し失った。 ここも、違うんだ。 小鳥は泣きながら、再びよちよち、よちよちと進み出す。 ぴょん! 気付くと小鳥は、規則正しく生えている草が水溜まりに浮かぶように並んでいる近くに居た。 そこから、しかのように瞳が離れた顔をした、くちだけが笑っている、みどりいろのものが飛び出してきたのだ。 驚きながらも、あなたはだあれ、と小鳥はたずねる。 ギョエロ、ギョエロ。 みどりいろのものは、小鳥の知らないお歌を歌う。 ギョエロ、ギョエロ。 ぼくはカエル、ぴょんぴょん跳ねる。 ちいさい頃は跳べないぼくも、大人になればお歌も歌える。 ギョエロ、ギョエロ。 ぴょん、と跳ねたカエルは、小鳥にあいさつをした。 ごきげんよう。 君はだれだい。 ぼくはカエル。 あいさつが遅れてすまない。 かわりに一緒に歌でもどうだい! 小鳥は歌う。 ピチュンピチュンピチュン、わたしは小鳥。 ぱたぱた飛んで、高い木にとまるの。 ピチュンピチュンピチュン、わたしは小鳥。 この木からの眺めがすきよ。 なんて素晴らしいのかしら! 小鳥は歌い終わると、哀しい顔をしながら、カエルに話す。 でも、飛べななくなったの。もうだいすきなあの森のおばあさん樹にもとまれない。いっしょに歌えないの。 カエルは応える。 ギョエロ、ギョエロ。そうかいそうかい。それは残念だ。では、いっしょにぼくの歌を歌わないかい?この歌は踊りながら歌うから、元気がでるのさ。 ギョエロ、ギョエロ。 ピチュン、ピチュン。 ギョエロ、ギョエロ。 ピチュン、ピチュン。 小鳥はカエルといっしょに踊りだす。 ぴょんぴょん跳ねるうちに、小鳥は元気になってきて、カエルに言いました。 カエルさん、カエルさん、わたしも跳べるわ! わたしに飛べる羽が落ちても、跳べる脚があったのに! カエルは言う。 そうさ、ぼくにはきみのように飛べる羽を持ってない。だから跳ぶのさ。 小鳥は嬉しそうに応える。 そうだわ、飛べないなら、跳べば好い。 -END- [次頁#] [戻る] |