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ひぐらし短編

ギルド
(レナ・茨城事件後)


その場しのぎで笑って
鏡の前で泣いて

夜と朝を
なぞるだけの
まともな日常


【ギルド】



「なぜ、あんなことをしたのですか?」


…解りません
でも本当はあんなことはしたくなかったです


「たしか一緒にいたのはお友達、でしたっけ?」


はい
仲良しでいつも一緒にいました


「お友達に嫌なことを言われたのですか?」


いいえ
楽しくお喋りをしていました


「あ、すみません竜宮さん。先ほど記入して頂いた問診の結果が出たようです」


そうですか


「竜宮さんはとても真面目で責任感の強い方なんですね」


そうですか


「ええ。とても社交的で様々な人から好かれるタイプの方です」


そうですか


「あんなことがあった直後ですから落ち込んでいるでしょうね。少しゆっくりなさったら良いかもしれません。責任感の強い方は、自分自身でも知らぬ内にストレスを溜め込んでいたりするものです」


そうですか


「そうです。…と。竜宮さんは引っ越されてこちら(茨城)に?」


……………………


「ああ…すみません。竜宮さんの地元があまり聞き慣れない地名だったものですから」


……………………


「お疲れでしょうから少し眠って行かれてはどうでしょう?あ、ベッドに空きもありますし、お金の心配はなさらなくて大丈夫ですよ。お父様も竜宮さん…礼奈さんにゆっくりして欲しいと仰っています」


…………父、が?


「はい。礼奈さんの事をとても心配して、お父様が駆け付けてくださったのですよ。礼奈さんはとても親御さんに愛されているのですね」


…………………


「話が長くなって疲れてしまいましたよね。今はこれ以上なにも訊きませんからどうぞごゆっく」



嘘だッ!!!



「竜宮さん?」



嘘だ!!!
嘘だ嘘だ嘘だッ!!!



「竜宮さん、椅子に座ってリラックスを」



(コイツは敵だ!!)

親に愛されてるなんてどうして解る!!?



「礼奈さん。今、お父様を―――」
「先生!どうされましたか!?」



(医者は敵だ!!)

お母さんがあの時、愛していたのは私でもお父さんでもなかったんだ!!



「キミ、直ぐに鎮静剤と何人か看護師を!」
「わかりました」
「竜宮さん、そうでしたね…軽はずみな発言をしてしまいました。申し訳ありませ」



ふざけるなッ!!!

なにがわかるなにがわかるなにがわかるなにがわかるなにがわかるなにがわかるッ!!?



(あの女が呪わしい)
(弱って行くお父さんの背中)
(幸と不幸の割合は0.1:9.9)



(なにも知りもしないくせに!!)



「先生!鎮静剤を!」
「患者は取り乱して暴れている!君たち、彼女を押さえて!」



知らないくせに知らないくせに…なにも知らないくせに――ッ!!!



(ちゅ…う、しゃ…!?)


(イヤ!!!)



ぅうぁああー…ッ!!!



(タスケテ―――ッ)






「ふぅ…なんとか過度の暴動や自傷行為は抑えられましたね」



(タ、ス、ケ……テ、)



「先生。父親にはなんと説明したらよろしいですか?」



(―――…か、げ?)



「入院でしょう」



(ち、が…う?な、に…)



「入院、ですか。ではそのように竜宮礼奈の父親に伝えてきます」


(あ、なた…ハ…ダ、レ)



「そうだな、頼む。ちょうど新薬を試してみたいと思っていたところだったんだ。竜宮礼奈は『うってつけ』だ」



(オ、ヤシロ…さ、ま?)



「……新型、プラシルですか」



(お、ネが、イ)



「もちろん」




(ワ、たシ… ヲ、タ…スけ…………)




「新型PC、だよ」








「サァ竜宮さん、このお薬を飲むと、とてもラクになりますよ」


……………………



(ピンク色のカプセル薬)


(思考が停止して辛いことを考えなくて済む)



(代償として、楽しいことも考えられなくなる)



(だけど)



(ラクになれるんだったらまぁ)

(いっか)








(でモネ、ほんとウハ、ノみたクナいノ)



(ダから…オねガい…)


(だレカ、わたシを)








たすけ








愛されたくて
吠えて
愛されることに
怯えて

汚れたって
受け止めろ
世界は
自分のモンだ

それも全て
気が狂う程
まともな日常






*end*

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あきゅろす。
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