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夏ホラーレビュー
坂本ヒロノリ「廻転怨鎖」
流転する怨念。
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 身体は伽藍。精神は空虚。つまりそれが、私の存在価値。
 そんな印象深い文章から始まる物語は独特の重力を持っている。粘っこく、だがどこか殺伐としている。そしてそれらは絶対的にリアルだ。

 薄い壁の向こうから姉の喘ぎ声が聞こえた。それからごく普通の家庭は、奇妙なねじれを生んでいく。
 前半は平凡な家族描写から始まっているものの、読み進めていくとそれが非凡であることを感じるに違いない。平凡な仮面を被っている、そう感づくのだ。
 だがそのときには既に遅く、他のホラーにはない気持ち悪さのとりこになる。人の理解を超えた恐怖、不可侵な奇妙さ、軸のずれ。まるで人ならざる、そして人よりも高みにあるものに観察されているような冷たさに囚われる。

 呪縛、怨念、畏怖、……それは色々な名前を持っている。ぜひこの作品を読んで、それの重さを感じ、恐怖して欲しい。
 この物語は、他のホラーと何かが違う。

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