夏ホラーレビュー
水樹 裕「かごめかごめ」
誰もが知っていて、誰もが知らない。
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平凡な主人公に届く謎のメール。それには「かごめかごめ」と書かれていた。そのメールをきっかけに、主人公はある恐怖の足音を辿ることになる。
今回の夏ホラーでは「かごめかごめ」という民謡を使ったものが多かったように思う。短い音律と意味深な詞で作られた独特の歌には、想像の泉を刺激してやまない何かがあるのかもしれない。そしてそれは不思議と、読者の食欲も掻き立てる。
かごめかごめによって惹きつけるとともに、今度はテンポのよい文章と謎を含んだストーリーによって、楽しませてくれる。前編後編の二段構成で、文章も他の夏ホラー作品より多目ではあるが、まったく文字数を感じさせない軽快さがあり、ぐんぐん進んでいく。なんとも力強い構成なのだが、それだけでなく、物語自体にも様々な人間の葛藤が濃縮されていて、まるで一本のドラマを見るよう。
魅惑的な匂いを持ちながら、匂いに頼り過ぎない安定感をもった力作だ。
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