[携帯モード] [URL送信]

夏ホラーレビュー
天海 沙月「モシモシ、」
つながるべきではない場所へ
読む
 夏ホラー企画では最年少の部類に入る作者であるが、昨年の夏ホラーでも高い人気を博した実力派でもある。高い文章力と構成力に若い感性が絡み合う作風を持つ、非常に将来性の高い物書きのひとり。そんな彼女が渾身をこめて用意したのがこの作品だ。
 電話の切れた後のツーツーという音。相手とは繋がっていないということを知らせるこの音を十三回聞くと、本来繋がっていないはずなのに、どこかへ電話が繋がるという。そんな他愛無い都市伝説に好奇心を持った主人公と友人たち。彼らは恐怖心を押し殺し、チャレンジしてしまう。それが悪夢の始まりとも知らずに。
 都市伝説という昔ながらのホラーアイテムを使い、王道を匂わせる構成。しかしどんどんと思いも寄らない展開に導かれていく。読者に予想外のストーリーをみせつつ、ラストへと盛り上がっていくその様は、荘厳な音楽のようだ。
 盛り上がった後に残されるのは寂しい疑問。そしてそれは、都市伝説というものが広がっていく理由に繋がっているような気がする。都市伝説がなぜ繰り返し人々の間で交わされていくのか、その謎を垣間見るような読後感は現実へとリンクし、読者は「もしかして」と心に物語を引きずってしまうだろう。



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!