夏ホラーレビュー
風海南都「蚊の顔」
君がいたから、世界が光りだした
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作品にあわせて文章を変える柔軟性と、面白い作品を読ませようという気概を感じさせる筆者はこの夏、ふたつの相対的な魅力を持つ作品を手がけた。ふたつのうちのひとつ、「蚊の顔」は、ユニークであったりファンタジーであったりと、ホラーながら明るい要素によって、読者を魅了する。
蚊に刺された部分が異常にかゆい。苦しんでようやく納まったと思いきや、それが人面そうサイトウとなってしまう。主人公と人面そうとの、不思議な交流が始まり……。
まさかの人面そう。このいっけん使い古された設定を、うまい具合に使った。不気味な存在である人面そうに平凡な名前をつけ、身近な友人のように、あるいは愛しいもののように演出することで、その使い古されていると思わせる設定を見事に新鮮なものへと変えた。王道を通りながらも王道ではなく、ホラーでありながらもホラーすぎない。
破天荒ながら涙あり笑いあり、不思議な均衡を保ちながら物語はクライマックスへとすすむ。圧倒的にドラマティックな作品だ。
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