夏ホラーレビュー 瀬戸孝輝「幻話」 謎に、ハマれ。 読む 今回この作者は、ふたつの夏ホラー作品を発表した。そのふたつの世界観は共通している。語り手が探偵業に腰掛け、事務所を構えているのだ。 その一方と比べてみると、こちらはキャラクターが明るく、言い回しもコメディ調でとても愉快である。しかしだからといって、恐怖がなくなったわけではない。 探偵である主人公。彼が開いている探偵事務所をよく訪問する女の子。 女の子に楽しく手をやく主人公は、彼女にある不思議な体験談を語る。それはある日やってきた、なんのへんてつもない依頼だったのだが……。 さて、読んでお分かりの通り、前半は女の子との掛け合いが入り明るく展開していく。しかしその明るさに、侮ってはならない。物語が進むにつれ、展開は狂気を含んでいくことになる。ホラー好きの読者を裏切らない、嬉しい展開だ。 また、ラストには大きなどんでん返しが用意されている。それはタイトル「幻話」から組み立てられた巧妙な罠だ。 キャラクター、コメディ要素、狂気、巧妙な罠……ありとあらゆるサービス精神に満ちたエンターティメント短編。ぜひ楽しんで欲しい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |