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夏ホラーレビュー
沙堂瑠々亞「コンセント/プラグイン」
あなたも肉隗になるのね。と、彼女はいった。
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――なら、聞き流せばすぐ終わることも知っているでしょう?
軽い既視感があった。つくづく僕はこういった――頭は良いが何処かが欠けている、あるいは有り剰っている――人間に当たってしまう体質らしい。今までの経験上、回避が失敗した場合に取る方法はひとつしかないと知っていた。
Nが語る、とかく「整合性」の無い話。

 これはこの作品の「あらすじ」として設置された文章だ。分かりそうで分からないあらすじ。だがこのあらすじは、物語と文章の性質をくっきりと表している。
 この、霧に映りこんだ影を掴むような、不透明なあらすじは物語に直結する。このあらすじで得られる感覚と同じく、物語も不安定で不鮮明で、だがとても心惹かれる、麻薬のような作品だ。
 狂気がイメージに直結し、脳味噌に絡みこむ。白昼夢をみているような雰囲気は、論理が無いようでどこか哲学的。「整合性」の無い話とは、いやはや、よく言ったものだ。

 きっと、結局どのような話なのかと、レビューを読む方は思うかもしれない。正直に言うと、この作品は「どのような物語でもない」としか言えないのだ。
 人を惑わせ、不安にさせる、だがその理由は分からず、不気味さが心に残る。物語の中に、正体不明の幽霊のようなものが出るのではない。物語自体が、正体不明なのだ。
 まさに、奇怪な作品。

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あきゅろす。
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