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夏ホラーレビュー
煩村綾弥「『君、還るはずだった浜辺の夜に』」
君にもう一度会うために、僕は底知れぬ罪をおかす。
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 好きな人に会いたいという感情は時に純粋で、時にどんなものよりも捻じ曲がっているのではないだろうか。この物語はあまりにも愛が捻じ曲がってしまった。そして狂気に変質してしまった。とても恐ろしく、だが救われない話だ。

 主人公は一ヶ月前に最愛の恋人を失ってしまう。その失望と悲しみに耐えられなくなった彼は、ある儀式に目をつけ、それを実行することを決意する。だがそれは、その実験内容と結果から、禁忌とされたものだった。

 美しい海、儀式の情景描写。それに主人公が抱える深い哀惜が軽やかに絡み合い、切ないノクターンを奏でている。物語は終盤にかけて丁寧に練りこまれていき、最後の一節では読者の魂に強く響くだろう。救済から遠い、ある意味自業自得とも言える結果は、読者に切ない余韻の傷跡を残す。
 主人公は狂っている。だがそれを責めることは出来ない。

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