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夏ホラーレビュー
†アラクネ†「風鈴人形」
平凡な日々は唐突に奪われ。

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 人形というものはあらゆる点から人間に愛されるよう作られている。大きな目、小さな唇、滑らかな材質の肌、デフォルメされた体。だからこそ古くから親しまれている。
 だがその一方で、恐怖を滲み出しているのも確かだ。静かな彼らをじっと見ていると、呼びかけられているような不確かな感覚が襲う。魂が宿っているような気さえ、する。そこには人間の代理になってしまうのではないかという根源的な不安がある。

 主人公は結婚したばかりで、夏に新居へと移動した。そこで偶然見つけた、妹の形見と言うべき人形。その人形を通じて妹との柔らかな思い出に浸るのだが。

 愛くるしい、可愛らしい。人は時に、愛情を人形に傾ける。だけれど沈黙を守り続ける人形にもし魂があったら、人は何を考えているか知ることは出来ない。もしかしたら人間には理解できない独自のルールを彼らは持っているかもしれない。そのifはとても恐ろしいかもしれない。
 人形を通して未知の恐怖を想起してくれる、上質の作品だ。

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あきゅろす。
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